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第18話

「……わかりました、すみません」 後味苦い健次だが、アキラのところへ戻ってくる。 「…アキラ」 すでに座って待っているアキラ。 「健次さん…忙しかったら、オレいいよ…迷惑かけたくないし…」 うつむいて、考えなおして言うアキラ。 本当は行きたくても… 「アキラ、それは違いますよ…僕はずっと前からアキラと一緒に遊びに行きたかったんです。僕のわがままに付き合っていただけますか?」 そう優しく微笑んでくれる健次をみて、アキラは嬉しいのに胸の奥がチクリと痛んだ… 「うん…」 「半日ですが、楽しみましょうね」 差し出された手を握り…健次に連れられ外出する。 行きたい所と聞かれても…誰かと出掛ける日がくるなんて思ってもいなかったので思い浮かばない… 困っていると健次は色々説明しながらテーマパークへと連れてきてくれた。 本当に前々から計画してくれていたかのように… 大好きな健次と、アトラクションを楽しんだり、店を見てまわったり…今までにない楽しい時間を過ごしたアキラ。 その楽しい時は、あっという間に過ぎ…夕日は沈み辺りは薄暗くなってくる。 帰りの車の中… 「アキラ、今日は楽しかったですね。疲れましたか?」 アキラをうかがいながら聞く… 「ううん、楽しかった」 素直に言葉が出るアキラ… けれど、また行きたいとはいえなくて… 「それは良かったです。この辺りに美味しいレストランがあるんです、食べて帰りましょうね」 「うん…」 健次は最後にレストランで美味しいスパゲティを食べさせてくれた。 「アキラ、少し待っていてくださいね…」 健次は、一人席を外し病院の様子を聞くために電話をかける。 「楠木です、亜澄先生にかわって頂けますか?」 自分の代わりをしてもらっている亜澄に取りあえず様子を聞こうと繋いでもらう。 『健次か?』 「病院の方はどう?」 『患者とかは全然問題ないんだ…普段より急患も少ないくらいだから…』 「…よかった、ありがとう」 『ただ、もっとマズイことに…取りあえず早く戻って来い』 緊迫した言葉… 「え?」 『本院から上の奴らが来て、色々と…今、副院長が対応してるんだ』 「本当に!?」 『たぶん磯崎の野郎が告げ口したんだ…ふざけやがって!』 亜澄は舌打ちをして声をあらげる。 「亜澄、落ち着いて…僕はもうすぐ帰れるから、そう伝えて、あまり盾突かないように…」 取りあえず亜澄を落ち着かせ伝言を頼む健次。 『わかってるよ、くそっ』 本院の使者に逆らったら、今の病院で仕事が出来なくなる可能性だって充分ある。 「ごめん、迷惑をかけて…すぐ戻るから」 そう電話を切る健次… かなりマズいことになっているが、出来るかぎり心を落ち着かせてアキラの元へ戻るつもりの健次。 アキラには大人の勝手な事情など気にしてほしくないから… 「…健次さん、」 アキラはもう食べ終わっていた。 「あ、もう食べ終わってしまったのですね…じゃ、出ましょうか」 しかし心の中で焦っているのか…自分は食べ終わっていないのにそう言葉が出てしまう健次。 「健次さん、もう食べないんだ…」 「あぁ、お腹が一杯になってしまって…お行儀がわるいですね」 はたと取り繕う言葉でごまかす健次。

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