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第19話

「ううん、オレもいつもはすぐお腹いっぱいになるけど…今日は色々動いたし、美味しかったから全部食べれた」 嬉しそうに微笑むアキラの顔を見て、焦っていた健次の心が解される。 今はアキラと一緒にいるのだから…そう思い直す。 「良かったです。連れて来た甲斐がありました…また来ましょうね」 優しく笑う健次。 「うん、帰ろう…健次さん」 健次らしくない様子を見て、なんとなく気付くアキラ。 病院で何かあったのかも…と、 「アキラ…はい」 健次は頷いてアキラの手を引いて店を出る。 アキラを自宅へ送りたかったが…病院でいざこざが起きているから、ひとまず病院に向かう健次。 落ち着ける音楽が流れる車内… 「……」 「健次さん?」 アキラはぽつりと話し掛ける。 「どうしました?」 「…今日はありがとう」 静かにお礼を言うアキラ。 「アキラ…、こちらこそ、とても楽しかったですよ。いい息抜きになりました…ありがとうございます」 「…オレ、健次さんが、本当のお父さんだったら、よかったのに…」 少し躊躇うように言葉にするアキラ。 「アキラ…」 アキラのその言葉で伝えたかった事を思い出す健次。 「なりますか?」 「え…」 「親子に」 優しく伝える。 「えっ?」 健次の言うイミが分からないアキラ。 「アキラが望むなら…僕の養子になって、僕の息子として生きていきませんか?」 「養子…?」 「親子になれますよ…僕も、アキラのような賢い子は大歓迎です」 「健次さんが…オレの…」 父親…。 トクンと心臓の音が聞こえる感覚のアキラ。 健次が父だったらと何度思ったことか… それが叶えられるなら… でも、すぐには答えられないアキラ。 「はい…答えは今でなくていいので、考えておいて下さいね」 「うん…」 頷きながら少しだけ嬉しい気持ちを顔に出すアキラ。 そして間もなく車は健次の病院に着く… 駐車場に車を停め、アキラに伝える。 「アキラ、今日はもう遅いから僕が家まで送ります。少しだけ、ここで待っていてくださいね」 車にアキラを残して病院内に急ぐ健次。 「…健次さん」 その慌てた様子がすごく気になって、アキラはそっと健次の後をついていってしまう。 健次は医局へまっすぐ向かい、その後… 院長室へ足を進める。 「すみません、今戻りました…」 部屋に入ってすぐ謝る健次。 副院長にも、周りにいた医師にも謝っている。 あとをつけたアキラは開いた戸の隙間から頭を下げる健次の姿を見る。 その相手は黒いスーツに身を包んだ50代の男二人。 「院長である君が、公休でもない日に一人の子供だけ連れ遊びに行くとはどういう了見だ」 「救急病院に院長不在…その重さを分かっているのか?」 立て続けに、圧力のかかった言葉を浴びせられる健次。 「健次先生、その子供が駄々をこねたのでしょう、健次先生は仕方なく…」 副院長が助け船のつもりで言うが…

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