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第23話
ビクッとするアキラ。
「ってな、怒鳴ればガキは大人しくなる…で、」
もう一人のオキに教えるように言う。
続けてナオは…アキラの手を取り…
「…この指か?爪を立てたのは…」
アキラを脅すように言い…大人の手に比べたらまだ小さいアキラの人さし指と中指の根本に噛り付くナオ…じわじわと強く噛む。
「っ…ぅ、ィ…痛い痛い!」
ちぎれそうな手の痛みに耐えれず小声で呻くアキラ…
「ふ…今度、ひっかいたら…大事な指、噛み切ってやるからな…」
さらっと脅すナオ…アキラは恐怖心で頷くことも出来ない。
誰か助けて…
自分の力でなんとか出来る状況じゃないのは…よくわかっている。
何をされるのかは分からないけど…自分にとって絶望的な状況…
恐い…恐いけんじさん…
震える心の中で、呼んでしまうのは…唯一、信じてる優しい人…
…けんじさん、助けて…
思うほどに涙がでそうになる。
しかし…はっとするアキラ。
泣いたらだめだ…けんじさんに、迷惑がかかる…
今日、思い知ったばかりなのに…
また同じことを…
優しいけんじさんに頼って…また邪魔をしてしまう。
その思いが少年の…アキラの心を縛る。
泣かない…けんじさんにだけは迷惑をかけない…
そう誓ったから…
「ガキは単純…扱いやすい…動物と同じ、痛みを与えれば従順になる。こつを掴めば初撮影なんか簡単なもんだ…」
大人しくなったアキラを見てそう、オキに教えるナオ。
どうやら、オキは初撮影の研修を受けているようで…ナオの傍で見学している…
その間に出来るかぎり息をつき冷静になろうとするアキラ。
「…ねぇ、」
そして、勇気を振り絞って大人達に声をかける。
「ん?」
振り返る男に…睨まれたように思うアキラだが…
「…オレに、何する気?」
震える声を無理に出して、恐怖に打ち勝とうとするアキラ。
「ふん、珍しいガキだな…たいていは怖がって泣くか怯えて何もできないのが普通だが…お前、小さいくせに案外キモが据ってるな…」
などと褒めてくる。
「…誘拐、しても意味ないよ。オレの為に金…出すような親じゃ、ないから…無駄だから…そしたらオレを殺す気?」
視線を投げ掛け聞くアキラ。
「…お前は殺されたいのか?」
「……」
無言で首を振るアキラ。
「…残念だけどな…脅すところは、お前の実親じゃない…情報によると、お前は…」
アキラの色白の肌に触れ、顔を近づけながら言うナオ。
「……」
男の口ぶりが…悪い予感を感じさせる。
もし知られていたら…
「…小児救急病院の院長」
思わせぶりに、ゆっくり話す。
「駄目ッ!言ったらダメッ!」
それを聞いたとたん、目を見開き、思わず叫んでしまう。
健次さんを…脅迫されるのは絶対にダメだ。
これ以上迷惑かけたら、本当に健次さんの生活を壊してしまう。
「本当に自分の親より大切なんだな…弱点が分かれば操りやすい」
「お願い…言わないで…」
アキラは真剣だった。
「そうだな、じゃ…俺たちの言うとおりにするんだ。そうすれば、言わない」
優しく笑い言うナオ。
「本当に…?」
「あぁ、お前みたいな可愛いガキに頼まれたら…嘘はつけない、約束する」
わざとらしく言うナオ。
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