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第29話
「オレは落ち着いてる。話して、ここはどういうところ?」
「そうだね。まず、今から君をどうこうするつもりはないから安心してね…もちろん君の親類を脅迫とかもしないから…」
頷き伝えるコウヤ。
「……」
こくんと頷くアキラ。
「…今日、された行為を覚えている?」
「…なんとなく」
思い出すのは、大人たちに…すごく痛いことをされたという事実と、はじめて激しく人の熱を感じ、必要とされたこと…
「…じゃ、そこのテレビを見ていてね」
コウヤは棚にあるテレビをさして言うと、リモコンで映像を再生する。
『ゃ…ァ痛、ッ』
流れはじめた映像は…
車内で、裸の自分が…
「ッ!?」
その光景を見せられ…
ゾクッとその時のことが蘇り…身体が震える感覚がはしる。
しばらく、喘ぐ自分の姿を凝視していたアキラ。
「…思い出したかな?ここは、こういうコトを撮影して、映像にして秘密で売っている会社なんだよ」
「売る…これを?」
売ることもショックだったが、こんなのを買う人がいる事にも驚くアキラ。
「そう、大人はね…こういうのを楽しみにしている人もいるんだよ」
「……」
いまいち理解には到れないが…黙って話を聞くアキラ。
「君は選ばれた人材」
「…え?」
「毎年、新人は各年齢に二人しか採らない。これは去年の新人の初撮影の映像だよ」
リモコンを操作して映像を切り替える。
『ァ、ぃ…痛いッ、ゃァ!』
黒髪の自分とそう変わらない子供…涙を流しながら、ひとりの大人の行為を拒んでいる。
「ほとんどのコが、君も体験した初撮影をしているんだよ、だいたい、11才の時に…だからこのコは今12才だね」
「誰?」
「ん?このコは…性優名ヨシだね」
「せいゆう名?」
「うん、映像を売る上で…本名は使えない。ここBOUSで働く者は常に、仮の名で過ごしている、俺のコウヤという名前も本名じゃないんだよ」
「…名前、働く者。オレもここで働くってこと?」
少し考えてアキラはそう聞いてみる。
「君は察しがいいね、でも働く資格があるだけだよ、働くと決まったわけじゃない…決めるのは君自身なんだ」
「…オレが決める?あんなこと…いつもするの?」
「ううん、君はまだ年齢が低いから、撮影は服を脱いだり触れる程度だよ、直接SEXに及ぶ撮影は、早くて11才以上…中学生からだね」
「SEX…」
「うん…確実に他人と触れ合う仕事になるし、台本にそった演技をしてもらうから…」
「…うん」
「よく考えて、働くか決めてね。一度働くと決めたら、二十歳まで辞めれないから…その代わり働かないなら、こことの関係は一切なくなる。君と会うことももうない…」
そっとアキラの頬に触れて優しく説明するコウヤ。
「……」
それを聞いて、視線を落とし考えるアキラ。
家に帰ったとしても…
自分に、こんなに優しく触れてくれる大人はいない…
認めてくれる大人もいない…
けんじさんのトコにも、あれだけ迷惑をかけてしまったら…
もう、行けない…
誰にも必要とされない、孤独な生活が繰り返されるだけ…
「ここでは…オレ、必要とされてるのかな?」
ぽつりとアキラは聞いてしまう。
「言ったよね、君は選ばれた人材。誰でも働けるわけじゃないんだよ、君が持って生まれた可愛い容姿は、BOUSに必要なんだ。だいたい、11才から選ぶところを君は?」
軽く問うコウヤ…
「…今は9才」
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