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第8話

「は、ッ……アァッ……」 「……前立腺か奥、どっちがいい?」 治信さんの恥ずかしい問いかけに、一度頭を左右に振ったところ、彼の動きが止まりました。まるで僕の直腸を灼いてしまうのではないかと思うほどに、雄は熱く、びくびくと脈打ちます。焦れったい快感に裸体をもぞもぞと動かす他ない僕に、治信さんはにやりと笑って「統」と促してきました。 「……う、っ……」 「ほら、言えよ」 「……おく……、がいい、です……」 消え入るような声で答えると、治信さんは早速律動を再開させました。硬い亀頭が最奥を穿つ度に、頭のなかに真っ白な閃光が広がり、全身に痺れるような快楽が巡り、僕は波打つように身をよじりました。 「ああっ……あんっ、……は、ぁ、……!」 「……ッ!」 「はるのぶさ……あッ! すご、……あぁ……!」 腸がうねうねと蠢き、治信さんの立派な生殖器にねっとりと絡みついているのが分かります。男娼時代にはついぞ目覚めなかった後ろの良さを、治信さんにしっかりと教え込まれた僕の肉体は、まるで女性の膣のごとく、彼の体液を搾取しようとしていました。 身体の奥深くまで彼に汚されたくて、滅茶苦茶にされたい。僕はおのずと口にしていました。 「……あ、ァッ……もっと、もっと……!」 「……、統」 「たくさん、突いてッ! お願いしま……あぁんっ!」 ずん、と荒々しく結腸を抉られた瞬間、頭のなかは一際真っ白になり、身体は大きく後ろに反れました。強烈なまでの忘我に身も心も支配され、半勃ちだった僕の性器からは雫が一粒、漏れました。 「あああッ! あんっ! はぁ……っ、あ……!」 僕が絶頂に達している最中も、治信さんは容赦なくそこを責め続けます。ぎゅうっと閉ざしたまぶたの裏で、ばちばちっと白光が弾け、脳髄からぐらぐらとしました。はしたない声も腰のうねりも止まらず、僕はほとんど我を忘れて、治信さんが与えてくれる激しい快楽に溺れていました。 「……ァッ! あ、……また……っ、ああ、ンッ!」 「……はぁっ……ぁ」 「くる、くるっ……! ……アアッ!」 再び気を遣った直後、貪るように唇を食まれました。治信さんの色っぽい声が混ざった鼻息が顔にかかり、口の周りは彼の粘っこい唾液でべとべとになっていきます。……薄めた水飴のようにほんのりと甘いそれを、まるで蝶のように吸い、嚥下する。僕の口内には自分の唾液以上に、彼のが流れ込んでいるかも知れません。 「……みつる、統……ッ」 「んぁっ……治信さ……!」 「お前は……本当にかわいいな」 治信さんの声が、言葉が、呪文だとするなら。それを心身に受ける僕は、徐々に溶けて輪郭がなくなって、やがて蜜になってしまうかも知れない。 蜜になった僕は治信さんに絡みつき、そして彼をゆっくりと同化させていく。ふたりしてどろどろの蜜になって、寝室には甘ったるい匂いが嫌というほど充満して、それでも僕たちは誰よりも幸せで。そんな魔法があるならば、喜んでかけられたい。治信さんとひとつの存在になれるなら、黄金色に艶めくそれになってしまってもいい。 ――なんて、歳のわりには青臭くて夢見がちなことを考えてしまい、心の中で冷めた笑いを洩らしそうになりながらも、今夜くらいはいいかと思ってしまう自分がいました。何が言いたいのかと言うと、それくらい、僕は彼に惚れているのです。

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