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Ⅰ:2
◇
一週間前のあの日。
その日の内に俺がセンチネルだと判明し、その上性的接触でしか回復を見込めない事も分かった。
医師は直ぐに性的接触治療を行う女性のセカンドガイドを派遣すると言った。
男性のセンチネルに女性のガイドを当てがうなんて何だか非情な気もしなくないが、どうやら国はあわよくばプライベートなパートナーへの発展を期待している様だった。
そうなれば彼らは夫婦として支え合う事になり、セカンドガイドとして保障金を支払う必要が無くなるからだ。その分国が楽になる、簡単に言えばそういう話だ。
だが、俺はその話に首を横へ振る。
『俺、ゲイなんです』
まだ特定の誰かを好きになった事は無かったが、女に興味を持てないことは間違いなかった。だからあの場で両親に言えたことはラッキーだと思う。
もうこれ以上、無駄に何かを期待されるのはごめんだったから。
同性を対処出来るセカンドガイドを探すのには随分と苦労したらしく、ガイドが見つかったのは倒れてから三日後の事だった。
二時間の身体的接触だけでは回復出来ていなかった俺の体は、その三日で随分と衰弱してしまった。
補聴器では抑えられない爆音と、それに刺激されて起きる激しい頭痛、吐き気。
サングラスをかけても目を突き刺すような痛みを与える光の波に、正直死んだ方がマシなんじゃないかと本気で思った。
個室に隔離され、兎に角殆んど人の出入りを無くしてもらい、ただひたすらジッとしてどの位経ったのか…真夜中に突然ドアが開いた。それと共につけられた室内灯に、俺は耐えられず呻き声を上げる。
サングラスをかけていない瞼越しに、眼球へと激痛が走った。
「ッ……っ、う……」
「光くんごめんね、苦しいね。今ガイドさんを連れて来たから…もう楽になるからね」
ひっそりと話したのは、多分俺の担当医。
目も開けられず、辛すぎて仰向けになったまま寝返りも打てずに居た俺に、担当医に変わって誰かが覆い被さった。
顔の右側で大きくガサリと音がして、少しだけ枕が沈んだと認識した途端、顎を冷たい指に固定され気付けば口付けられていた。
いや、実際口付けらたと認識したのは全てが終わった後だ。
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