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Ⅱ:3

「さぁ、どうかな。でもね、俺調べてみたんですけど、大抵のセンチネルはガイドとの接触を機に第六感を覚醒させてるんです。そのうえ、その力はガイドと会うたびに強くなっていくらしいんです」  俺がまだ話していると言うのに、栗原さんが手を伸ばす。 「だったら何? ガイドとの接触を断てる訳でもないだろうに」  クイ、と顎を取り唇を重ねようとするのを、俺は反射的に拒絶していた。パシっと弾かれた手が小気味良い音を鳴らした。 「断てるよ」 「……断てない」 「断てる」 「断てない」 「断てるッ!! このまま貴方に会わなければ良いだけだ!」 「そっ、それは駄目だよ光くん! 死んでしまうよ!」  パーテーションの裏からついに担当医が慌てて顔を出す。矢張り心の声と実際の声では張りが違うなぁと場違いな事を考えた。 「治療を受けなければ、センチネルはその苦しみから必ず心を壊してしまう。辛くて自ら命を絶ってしまう子も少なくないんだよ? 治療を止めるだなんて自殺行為だよ…何かあったの?」  その言葉に何故か栗原さんが強く手を握りしめた。けど、俺にはその理由は分からないし、知りたいとも思わなかった。 「じゃあ、そのまま第六感を…変化を受け入れろって事ですか?」 「命には…代えられないと、私は思うから……」  自信なさ気なその台詞が俺の神経を逆撫でし、心を氷の様に冷たくした。 「死んだ方が楽だったりして」  主治医も、栗原さんも、驚いた顔をして俺を見た。 「俺、もう治療は受けない。今日は来てもらって申し訳ないですけど……もう次からは結構なんで」  床に置いていた小さなショルダーバッグを手に掴むと、パイプ椅子から立ち上がり栗原さんの横を通り過ぎた……瞬間。 「ッ!?」  体が引力に飲み込まれたかと思うと、気付いた時には視界が栗原さんでいっぱいになっていた。  右腕と後頭部をがっしりと掴まれ、その手の力には加減がなく掴まれた部分が痛い。  無理矢理に合わせられた唇はいつもより強引に舌を捩じ込み俺の中へと入って来た。早急にとろりとした物を流し込む動作に、俺は必死に抵抗する。

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