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Ⅲ:終
小雨が降る真夜中を、小さな子供みたいに泣きながら帰った。
帰り道がこんなに長かったなんて知らなくて、途方もないほど遠く感じながら。
気付けば俺は、握り締めた携帯で栗原さんの番号を開いてた。
名前を見るだけで何故かもっと涙が溢れて来て、縋りたくもないのに指はあの人の声を聞こうと動く。
そうしてワンコール鳴らしてからハッとした。
何やってんだよ、俺は。
無償の愛をくれる家族でも無ければ、時間関係なしに悩みを聞いてくれる友達でもない。
あの人は、国から課せられた義務を果たしている唯のガイドだ。それ以上でも、それ以下でもない。
案の定繋がりを切った携帯は震えることなく静かなままで、俺の孤独を一層強めてくれた。
濡れ鼠になった俺は、至る所が建て付けの悪いボロアパートに雪崩込んだ。
着替える気力もなく、ただ涙を垂れ流す。
頭は痛いし耳の奥も痛い。濡れた体は寒いし心だって凍えそうだ。
だけどそれを緩和する術が俺には無かった。
ただそっと、苦しみを我慢して目を閉じる。
ああ、やっぱり俺には何も無い…
途方もない孤独感。
だがそこに、ひとつの光が飛び込む。
それはこの時より、二時間が経過した頃のことだった。
第三章:END
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