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番外編:5
「それは良かった。今日は遠慮なんて無しに直ぐにでもパートナーを呼んで、しっかりと癒してから、念の為に病院へ行かれることをおすすめします」
「はい…本当にありがとうございました」
お礼を言い終わっても、彼女はその手を離さない。
「すみません、そろそろ手を」
「あ、あの! こんなことを急に言うのは失礼だと承知なのですがっ、」
やめて…
「こんなに早く治るということは、私たち、相性がとても良いと思うんです」
やめてくれよ…
「よかったら、私とパートナーを契約して」
そこまでが限界だった。俺は栗原さんの後ろで踵を返し、ひとり来た道を引き返す。
拒みたくないのに拒んでしまう、セックスもろくにできない面白みのない男の俺と、あんなにか弱そうな、美人で、触れられることになんの抵抗もない女性だったら、一体世の中の男はどっちを取るだろう? 俺に勝算なんて微塵もないじゃないか。
最後まで見せ付けられるくらいなら、いっそこのまま何処かへ消えて失くなってしまいたい。そう思ってふらふらと歩いていると、後ろから凄い力で腕を引かれた。
「どこ行くの!」
「…栗原さん……なんでここにいんの?」
「なに…?」
「あの人は?」
「え?」
「さっきの…」
栗原さんの目が吊り上がった。
「言ってる意味が分からない」
「だって」
「〝だって〟なに? 俺があの人と何だって言うの」
掴まれた腕が捻り上げられる。
「いたっ、痛いっ」
「時間をかけてゆっくりと思ってたけど…君には荒療治の方が良いみたいだ」
「あっ」
今度はふたりで、来た道を引き返していった。
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