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第64話※トーマ視点

思ったより音が響いてしまい、一瞬動きを止めてジッとする。 しかし、母が様子を見に来る気配はない…一先ずホッとした。 早く行かないとと通気口に四つん這いになりながら通る。 汚れを気にせずどんどん暗い道を進んでいく。 ひやりと冷たい風が頬を撫でた。 どうやら分かれ道に突入したようだ。 一つは外への道だから風が吹いていて分かりやすい。 風がない道を進む。 するとやがて鉄格子に到着した。 なんでこんなに長いんだと不思議に思いながら鉄格子の向こう側を見る。 机には大量の紙が積み重なり、本棚がありと一度も入った事はなかったが父の部屋のような気がした。 再び灰掻き棒で壊す。 ガコンと音がして、通気口からゆっくりと這い出る。 すすまみれで咳き込む。 終わったら風呂に入ろうと思いながらも机に向かった。 決定的証拠がないか紙を一枚一枚確認する。 どれも騎士団長時代の仕事のようだ。 ずっと掃除もせず机に放置していたのか。 母にも入る事は許してなかったみたいだし、父が綺麗好きではない事は知っている。 ずぼらで亭主関白で母がいつも困っていたのを見ていた。 ふと机の下に小さな金庫があった。 …大事なものなら金庫に入れるよな。 しかし暗証番号なんて分からない。 ここまできたのにつまずくなんてと金庫を持ち上げる。 するとガチャッと遠くの方から音が聞こえた。 母が部屋から出た? その先を考えて冷や汗が流れる。 母は父を迎えに行ったと思う、つまり父はもうすぐ帰ってくる。 金庫を置き、どうやって開けるか考える。 暗証番号が無理なら力ずく…いや、ダメだ…すぐにバレてしまう。 思い付く数字を考えるが、用心深い父がしない暗証番号ばかりだ。 とりあえず試してみる、当然のように開かない。 それなら暗証番号は諦めてまた机のものを漁るか。 ……そちらの方が早そうだ。 そう思っていたら母と父の声がドアのすぐ側まで聞こえた。 ドアをジッと見つめる。 ………ここまでか、そう落胆した。 ガチャッと扉が開いた。 「そうか、トーマが」 「えぇ、お会いになりますか?」 「いやいい、私も忙しいからな」 「……はい」 母は寂しげな顔をして父に頭を下げて自室に戻っていた。 まるで母を使用人のように冷たくあしらう父に相変わらずだと睨み付ける。 父は机に向かった。 俺はそれをモニター越しに眺めていた。 くまの小型カメラに連動している小型モニターをズボンのポケットから取り出して画面を写す。 あの後俺は探すのを止めて棚に例のくまの小型カメラを設置した。 ちょうど金庫が見えるいい位置にあるから父が金庫に触ったら暗証番号がばっちり分かる。 まるで泥棒のようだと苦笑いしながら小型カメラ越しに父を見ながら音を立てないようにゆっくりと通気口を通る。 早速父は金庫に触れた。 ……早いな、もしかして近い内になにかあるのか? 金庫の中から茶色い封筒が現れてそれを掴むと、音声通信機器を手に取った。 何処かに電話するのか?するとしたらその茶色い封筒に関係する相手か。 書斎に戻ってきて、耳をすまして会話を聞き逃さないように聞く。 父は俺達に話すような低く冷たい声ではなく、親友に話すような明るい声で低姿勢で話し始めた。 こんな父は初めて見た、いや…そんな事よりも会話の内容に驚いた。 「はい、はい、こちらは大丈夫です…今息子が騎士団長をしておりまして…騎士団は私の思うがままです」 目を見開いた、騎士団が父の思うがまま?どういう事だ? 俺が騎士団長だからって父の命令を素直に聞く性格ではないのは父がよく知ってる筈だ。 嘘を付いてるようには感じられない、父が机の横に立て掛けられている魔剣に触れていた。 なるほど…脅して言う事を聞かせようとしているのか。 ……随分と息子を甘く見ているんだな。 俺は騎士団を捨てるような愚かな事はしない。 父はきっと俺が騎士団に入りたくないと思っていたから簡単に騎士団を裏切ると思っているみたいだ。 それからも相手に調子いい事を口にしていて眉を寄せた。 いったい相手は誰なんだ? 「この資料はとても貴重なものです、報酬はいつもの倍で……王族に関しての弱みや王都の騎士団の資料ですからね、よろしくお願いします」 通信を切る音が響いた。 それから父は茶色い封筒の中身を出して確認していた。 もう金庫にこだわる必要はないなと思った。 あの茶色い封筒には王様を含めて王族のプロフィールが載っていた。 そして弱みと呼べるものも… ある人は片目の視力がぼやけていて悪いとか背後に立っても気付くのが遅いとか…暗殺するには嬉しい情報だろう。 そして騎士団のプロフィールが載っていた。 そこには俺の魔力の話も書かれていた。 ………リンディについても書かれていたのは目を疑った。 旧友の娘まで売るのかこの男は… 父は何をしようとしているのか分かっているのか? こんなものを他国に渡したらすぐに戦争が起きて王都は一瞬で滅びる。 分かってないとしたら相当のアホだが父は腐っても昔は騎士団長だったんだ、分かってる筈だ。 王都がなくなってもそれなりの報酬が約束されているのか。 父は何も分かっていないようだ、甘い言葉で尻尾を振るなんて… 他国が自国を裏切った男を必要とするわけがない、きっと聞けるだけ情報を聞き…殺されるだろう。

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