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第100話

再び目を覚ました時はふかふかの毛布に包まれていた。 トーマが運んでくれたのだろうか。 周りを確認しても寝室にはトーマはいなかった。 寝室のドアの向こう側、つまりリビングで話し声が聞こえる。 ベッドから体を起こして話してるなら邪魔できないよなと思い窓を見つめる。 目は普通に黒い、トーマは力を使うと赤くなっていたが俺はどういう状況でそうなるのだろうか…それとも夢だけなのか? ルカに聞けばわかるかな、まだ帰れないって言ってたけど… 初めてルカにあった時、ルカはゲームのキャラにはいなかった。 あの時はただゲームのスポットが当たってない学校の友達だからと思っていた、でもルカは俺を助けてくれたと言っていた。 俺が時間をやり直せたのはルカのおかげだったんだ。 ならルカはきっと俺と同じゲームのイレギュラーだったって事なのかな。 そんな事を考えていたらリビングの方からガタッとなにかにぶつかる音が聞こえた。 その後に続く怒鳴り声、トーマの声だ。 いったいなにがあったのか気になりドアに近付く。 耳を当てなくても寝室まで声が響いてきた。 「ふざけるな!そんな事出来るわけない!」 「じゃあお前は他にいい方法があるのか?シグナムを油断させるにはこれしかないんだ」 トーマはそれでも反対を続けていた。 シグナム…きっとシグナム家を捕まえる作戦を立てているのだろう。 作戦を話したのは声からしてノエルか。 そしてどんな内容か分からないけどトーマは反対している。 シグナム家を捕まえられればこの世界は平和になる。 ゲームが終わる。 そしたら今度は俺達皆が物語を作っていける。 そのためだったら俺も何でもする、役に立ちたいんだ。 「だからって!アルトを囮に使うなんて出来ない!」 「…え?」 つい声が溢れた。 囮?俺が?俺の囮の話をしていたのか? トーマの声とそれを落ち着かせようとするノエルの声が重なる。 トーマの気持ちは分かる、囮となれば命に関わる危険がある…もしトーマが囮になると言われたらトーマは強くても万が一を考えて嫌だ。 でもノエルはこれしか方法はないと言う、シグナム家を捕まえる…俺もそれに協力出来るなら… 正直俺なんかであの両親が油断するか分からない。 前の人生では俺は失敗した、両親に道具にされ…自らの手でこの街を壊してしまった。 でも今の俺は前みたいな無知ではない、両親の考えている事も分かっている。 それに俺は、シグナム家に居ても一人じゃないって知ってる。 だからもう二度とあの過ちは犯さない。 ドアノブに手を置き捻りドアを開けた。 開く音で気付いたトーマとノエル、後会話に参加していなかったから分からなかったけどガリュー先生とリカルドと何故か縄で縛られて猿轡をしているグランがいた。 トーマはテーブルに乗り上げてノエルの胸ぐらを掴んでいた。 床には中身が出たティーカップが転がっていた。 トーマは驚いた顔をしてノエルから手を離した。 ノエルはシワになった服を整えて俺を苦笑いして見つめていた。 「アルト、どうかしたのか?」 トーマは何でもない様子で俺に笑いかけたつもりだったのだろうがらその顔は悲しみを堪えるような顔にしか見えなかった。 トーマにそんな顔をしてほしくない。 俺はトーマに駆け寄り抱きしめた。一瞬戸惑ったように感じたトーマだったが俺を包み込むように抱きしめて頭を撫でてくれた。 何だか泣きそうだった。 トーマは俺を死なせたと思い込んでいる。 トーマが現れた時俺は死んでしまったからよく知らない。 でもあれはトーマが悪いんじゃない、俺が勝手に行動した末路なんだ。 トーマが近くにいるのに相談もせず騎士さんの言う事を聞いた。 シグナム家で姉と和解したのは姉の本心を知れて良かったが失うものが多すぎた。 俺はもう二度とあんな事はしない。 「トーマ、俺を使って…俺もこの世界をトーマと救いたい!」 「……だめだ」 「トーマ!」 「もう二度目はないんだぞ、分かっているのか?」 「分かってる、だから俺は同じ事を二回も繰り返さない!」 「アルト…」

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