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浅生の過去
浅生は幼い頃に両親が離婚し、母親に引き取られる形で家を出ていた。程なくして彼女は再婚、浅生は義理の父と弟ができた。その頃の記憶は曖昧だが、それなりに幸せだったのではないかと浅生は思っている。
数年後、母と義父の離婚でその生活は終わりを迎えた。義弟は義父が引き取り、浅生も元々の父親の元に戻ることになった。それがどういう経緯でそうなったのか詳しいことを浅生は知らない。義父が結婚し、母親も新しい男の元へ行ったのだとそんなことを聞いたくらいだ。
浅生が父親の元に戻って二年と少し経った頃、いつものように学校に行き、友達と遊んで帰って来ると父親がいつもより早く帰って来ていた。酒を飲んでいるようで、絡まれたら面倒くさいなどと浅生が辟易していると、父は突きつけるように一枚の封書を渡してきた。それきり何も言わずに居間に引き返すので、浅生はそれを自室に持ち帰ることにした。
封書の宛名は父親に充てたもので、差出人は知らない名前だった。中を開くと一枚の便箋が四つ折りにして入っていた。そこには何だか小難しい言葉が並んでいたけれど、弟が亡くなったと要はそういうことが書かれているらしいと浅生は理解した。
後から知ったことだが、義父と義弟の新しい母は育児放棄をしていた。母親は以前にも同じことをしており、その時は事件性無しとして事故として処理されていた。二度目ということで、今度は何やら罰を受けたようだが義父と離婚したということ以上の情報を浅生は知らない。
浅生の父は去年浅生の実の母親とよりを戻した。それを機に浅生は家を出て今のアパートに越して来た。特に何かやりたいわけでもなく、何かをやろうという気も無かった浅生はアパートから近いという理由だけでコンビニのアルバイトをして生活費を賄う日々を送っていた。
東條父子に最初に出会ったとき感じた怒りは、無意識のうちにそういった過去の出来事と結び付けてしまっていたからかもしれなかった。
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