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それからがそらもう大変でした。
「古狐がえっらそうに!!」
「ぶっ殺す!!」
「憎さ余って殺意百倍!!」
まず化け狸が本性を現して次々と巨大狢に早変わりしました。
「受けて立つ、蹴散らしてやろうではないか」
次に九が化けもん狐へと姿を変えました。
それから始まるシャァーシャァー妖怪対決、爪と牙が激しく交差し、ドシンドシン響く地響き、一般村人が巻き込まれたら一溜まりもありません。
意地悪お兄さんは命からがらその場から逃げ出しました。
ところがどっこい。
「あいつ、三対一で大丈夫なのかよ?」
なんと、あの意地悪お兄さんが化けもん狐である九の心配を始めたではありませんか。
再び遥か頭上に現れたお月様の下、うろうろした挙句、回れ右、来た道を戻り出したではあーりませんか。
「俺が行ったところでどうにかなるわけじゃあねーが、ケガしてたら手当てくらいは……ん、ありゃ?」
お地蔵様の祠へ戻ってみると辺りは静か、冷たい風がただ吹き抜けていくばかり。
しかしよくよく目を凝らしてみれば茂みの中でヒィヒィ鳴く三頭の狸たちが。
もっとよく目を凝らしてみたらば、ああ、どうやら片玉をとられてしまっているようです、あーあ、可哀想に。
意地悪お兄さんはキュッと玉袋を縮み上がらせてぞっとしながらも駆け足でおうちへ戻りました。
すると。
「やはり性根の腐った人間だね、君は」
煌々と月明かりに照らされた縁側に人の姿をした九が座っていました。
「助けに来た僕を置いてさっさと逃げてしまった」
「……助けを呼んだ覚えはねぇ」
意地悪お兄さんは自分があの場に戻ったことを九に言いませんでした、照れ恥ずかしくて、何だか言えませんでした……。
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