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3-桜ひらひら親ぎつねムカムカ意地悪お兄さんヘベレケ!
山肌にぽつぽつと薄紅が交ざり始めて緩やかに春めいてきた今日この頃。
「よかったらウチでお花見しないかい」
優男お兄さんのおうちのすぐそばには立派な桜の木がありました。
優男お兄さんにご招待された、賭け事の次にお酒が好きだという典型的ダメ男の意地悪お兄さん、お相伴に与ることにしました。
「よぉ、来てやったぞ」
「いらっしゃい」
「きゅるん、こんにちはぁ」
おうちの縁側に肴を並べ、見た目は幼女風男子、正体は妖怪の血を引く妖狐の末裔、九九にお酌されて。
お花見をゆるゆる楽しんでいた着流し姿の優男お兄さん。
実に絵になります。
薄紅の花びらが春風にふわりふわり。
真っ青な空に色づく雫のように舞い上がります。
「もっと注ぎやがれ、九九」
儚い幻じみた風景を意地悪お兄さんの無粋な声がぶち壊しやがります。
「きゅるる、あんまりせっかちに飲むと急性アルコール中毒になるでしゅ」
「なんだてめぇ~難しい言葉知ってんな~」
「きゅー!」
二つの拳で悪戯に頭をごりごりされて九九はジタバタ、優男お兄さんの背後に逃げます、優男お兄さんは白磁の盃で美酒を少しずつ嗜みながら微笑ましそうに口元を綻ばせます。
「うぃ~もっと酒もってこ~い」
すぐに酔うくせに酒好きという、しょうもない意地悪お兄さん、とっくりからぐびぐび飲んで、もう赤ら顔、桜の花びらよりもまっかっかです。
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