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いつの間に人間の姿になった九。
布団にしがみついていた意地悪お兄さんをぐるんと引っ繰り返すと、さらりと長い髪を垂らし、ぐちゃぐちゃな顔を間近に覗き込んできました。
「こんなに濡らして。可哀想に」
涙で濡れていた目元や頬を美味しそうに舐め上げます。
ピクピク、心細そうに震える獣耳をよしよしと撫で揉みながら。
「はぁん……ッ、ぅぅッ、くすぐってぇッ!てか抜けよッ!」
「嫌だね」
尻奥に図太く居座ったままでいる九を悔しそうに睨め上げれば薄紅の唇は涼しげに言いました。
「今の君、こんなに可愛いんだもの。今日はずっと離さないよ」
長い長い睫毛、切れ長な目許をほんのり縁取る朱色、夢のようにきめ細やかな肌のあやかし狐は固まった意地悪お兄さんに微笑みかけました。
「それにね」
「……何だよ」
「このお耳を誰かに見られるのが嫌なら。僕と一緒に山へ来ればいいだけのこと」
「フン……次はお前が俺を娶るのかよ」
何気なく口にした意地悪お兄さんの言葉に、九は、花開くように薄紅の唇をふわりと綻ばせました。
「それは名案だね」
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