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8-親ぎつね冬毛モフモフ意地悪お兄さんついに嫁入り!

しんしんと降り頻る牡丹雪。 緩やかに連なる山々に贅沢に施された雪化粧。 人里よりも深い静寂に包み込まれた山の奥の奥。 時に枝に降り積もった雪がバサバサと下に落ちて、そして、また耳に痛いくらいの沈黙。 そうです、山の獣らは冬眠の真っ最中なのです。 落ち葉や枯れ木を掻き集めてあったかくした住処、凍てつく前に食べ物もどっさり溜め込んで、じっとして、眠っているのです。 だけど眠らないものたちもいます。 あやかしです。 「ふわぁぁぁ~……」 灰色の空から音もなく舞い降りる雪の狭間に見え隠れする朱色。 鳥居です。 夥しい数の鳥居がずらりと続いています。 白と朱、まるで異界にいざなう入り口のような。 出口があるのかはわかりませんが。 「むにゃむにゃ……今のはイカサマじゃねぇか、こンの詐欺師野郎が……むにゃ」 たくさんの数の鳥居を潜って潜って辿り着いた先には神社ではなく藁葺き屋根のおうちがありました。 隙間なく閉ざされた板戸と障子の向こう、隅々まで磨かれた板間では意地悪お兄さんが眠っています。 顔のシワは特に増えていないというのに、むしろ肌艶は増しているというのに。 いつの間にやら灰色がかった髪からぴょこんと突き出た狐の獣耳が時にピク、ピク、ピク。 「餅ぃ……餅が食べたい、お餅……」 それはそれはあったかい寝床でさっきから寝言を連発している意地悪お兄さん。 ふっさふさ、もっふもふ、それはそれは極上な天然毛布に包まれてアホ丸出しな寝顔で安眠中です。 意地悪お兄さんを懐にしっかり閉じ込めて寛いでいるのは妖怪の血を引く妖狐一族の末裔、九です。 最初はわざわざおなごに化けて人里に暮らす意地悪お兄さんの元へ嫁いでいったあやかし狐ですが。 意地悪お兄さんにこっそり内緒であやかし欠片を夜な夜な生抽入し、人間からあやかし寄りへ、少しずつ此方側に近づけて、狐耳を生やすまでに至らしめて、そして。 鋭い眼光翳す切れ長な大きな目で意地悪お兄さんを見守っていた九、愛しい伴侶にさらに寄り添いました。 これまでは洞穴を住処としていたあやかし狐ですが、ほぼほぼ人間、ちょっぴりあやかしとなった意地悪お兄さんのため、この新居を構えたわけで。 九は意地悪お兄さんを娶りました。 今は意地悪お兄さんが九の元で暮らしているのです。 改めて開始された新婚生活、寒さなんぞ気にならないくらい、どうにも熱々のようです……。

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