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「うおおッ、餅じゃねぇか!」 「火傷しないようにね」 「あぢぃッ」 「君は本当そそっかしいね」 焼き網で焼いた餅を海苔で挟み、下唇を軽く火傷しながらも、びろーーんと美味しそうに食べている意地悪お兄さん。 向かい側で次の餅を焼いてあげる九。 「お前は食わねぇのか?」 「歯にくっつくからね」 「若ぇ女みてぇなこと言いやがって」 「若ぇ女のこと、よく知ってるの?」 ほんのり朱色に縁取られた切れ長な眼が一瞬だけ無駄に鋭い光を帯び、意地悪お兄さんは危うく餅を喉に詰まらせそうに。 「げほげほッ! し、知るかよ、茶屋でたまたま見かけたんだよ!」 あったかとっくり服に冬用作務衣を着込んだ意地悪お兄さんが慌ててそう言えば、雪色の長い髪を肩から滴らせた九、無駄に整った微笑を浮かべて湯呑みを差し出してきました。 「ゆっくり飲んでね」 危ねぇ危ねぇ。 里を離れて男の俺が嫁いでやったっつぅのに、こいつときたら、相も変わらず。 「フン。しっかし俺が今一番食いたいモン、よくわかったなぁ、九?」 「君のことなら何だって」 次の餅が網の上で香ばしく焼けてぷーーーっと膨れつつあります。 「しっかしなぁ。この年で若白髪になるなんてよ」 「ごめんね」 「俺、なんだその……そっちに大分近づいてんのか? 髪やこの耳はさておき、外見以外、自分では特に何も感じねぇんだが」

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