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それは意地悪お兄さんが人里で暮らしていた頃のことでした。 「旨い肉でも引っ掛かってねぇかなぁ」 山に仕掛けた罠を見に出かけた意地悪お兄さん。 罠といっても、餌を置き、そのそばに小枝に引っ掛けたザルを放置しただけ、しょぼいザル罠です。 「どれどれ……おおっ!?」 意地悪お兄さん、ザルを上げればまさかのご対面に嬉し驚き、です。 「ツイてんな、ひっさびさの肉じゃねぇか」 罠に引っ掛かっていたのは兎でした。 何とも可愛らしい、ちっちゃなちっちゃな、兎です。 ザルの下で実にリラックスした様子で休んでいました。 「な、何か可愛い奴だな、だけど肉だしな、うん、美味しく頂いてやる、」 すっぱーーーーーーーーーーーん 後頭部に凄まじい衝撃を受けた意地悪お兄さん、どびっくりして振り返れば。 九の息子である九九が……巨大ハリセンを振りかぶった状態でちょこんと立っていました。 「きゅるん、この無礼者。祟られたいでしゅか」 呆然としている意地悪お兄さんの目の前でハリセンをにゅっと懐に仕舞った九九。 そっと、そっと、リラックスしていた兎を抱き上げます。 「彼奴はおばかでどあほで超だめなにんげんです」 「おい」 「だけど、とと様の大事なひとなんです」 「お、おい」 九九の小さな腕の中で、ふわぁ……と小さな欠伸をし、こっくり、兎は頷きました……? 静々と兎を抱き直した九九は首を傾げっぱなしの意地悪お兄さんをそこに残して歩き出します。 緋色の目が綺麗な兎を異界へ送り届けるため。

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