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「ひッッッ……ッ、九ッ、もぉしませんッ、朝帰りしませんッ……て……この助平狐ッッ!!!! 助平助平助平助平ッッ!!!!」
見目麗しい人間の姿からどでかい化けもん狐の姿と化した九に心行くまでお仕置きされて意地悪お兄さんは涙ながらに夫を罵ります。
「お前こそ昔は相ッ当なスケコマシだったんだろぉがッッ!とっかえひっかえ朝帰りしまくりだったんだろぉがッッ!?」
妖怪獰猛男根で卑猥に捲れるくらい尻穴をずっぼんずっぼん貫いていた九は鋭い眼光翳す切れ長な大きな目を見開かせました。
「狸や這虫に聞いたんだぞ……ッうぇぇ……んッ」
過去にヤキモチをやいている意地悪お兄さんが愛らしくって、愛らしくって。
食べちゃいたいくらい愛しい伴侶の朝帰りに苛立っていた九は途端にデレます。
人の姿に戻って下半身どろどろな意地悪お兄さんに優しく寄り添います。
「添い遂げたいと思ったのは君だけ」
「ッ……前にも聞いたぞ、それ……誰にでもホイホイ言ってんだろーが」
「もう。君ったら」
結局、意地悪お兄さんを許してあげた九でしたが。
「まさか我が家にアレを上げたなんて許さないよ……?」
その夜は物の怪寄合が開かれる日でした。
「留守を任せたよ」
「へぇへぇ」
「行ってきますの接吻は?」
「するか!しねぇよ!とっとと行きやがれ!」
物の怪寄合には狸や百足も出席するので、自分のいぬ間に意地悪お兄さんが気に入らない誰かと酒を飲んだり、最悪なケース、オイタする心配もなく。
夕闇が山々の端から端までがぶりと呑み込んだ頃、九は雪色の髪を靡かせて異界へと赴いていきました。
人里より離れた山の奥の奥に佇む我が家に残された意地悪お兄さん。
肌艶は前にもまして磨きがかかり、反対におぐしは若白髪、狐耳がぴょっこん。
秋冬用の装いであったかくして、再三注意されている戸締まり確認もさぼって、火がパチパチ爆ぜる囲炉裏のそばでゴロリ。
とても静かです。
淋しいくらいの静寂に、たった今出て行ったばかりのあやかし伴侶を恋しく思いつつ「けっ」とわざわざ声に出しておセンチを誤魔化します。
『一夜限りとして選んだ相手みな、真珠の如き艶めきを持した柔肌に玲瓏たる美声、それはそれは、云々』
あやかし屋敷の当主が言ったことがなかなか頭から離れない意地悪お兄さん。
あんだけ見た目抜群な九だ、どんな女だって落とせただろうよ。
それがなんで俺なんだか。
確かに理解不能、だ。
「ごめんください」
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