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「きゅるるん」 学校終わって、ずっと顔色悪くて調子悪ぃ三人はさっさと帰っちまって、一人でゲーセン行っても盛り上がらず、俺も早めにウチに帰ろーとすれば。 夕方の団地で幼馴染みと出くわした。 よくデキたイイコちゃんでそれなりにイケメン、年長には礼儀正しく年少には優しく、学校でも近所でもどこでも評判いい、チッ。 幼馴染みには見覚えのない連れがいた。 「迷子らしいんだ」 「迷子ぉ?」 「つい最近この辺に引っ越してきたみたいで」 「きゅるきゅる」 なんで鳴いてんだ、このガキ。 「何か怪しくねぇか。それに男だろ? 妙にぶりっこしてねぇ? 詐欺の末端じゃねぇの?」 「こんな小さい子が詐欺?」 「このご時世だぞ? ガキだろぉと油断できねぇぞ?」 「失礼な奴でしゅ」 やたら幼馴染みにくっついているガキにあっかんべー、された、すんげぇムカつく、やっぱ明らかにぶりっこしてんぞコイツ。 「おうち、お稲荷さんのそばだったでしゅ、おっきなお庭には井戸あったでしゅ」 「お稲荷さんのそば、井戸のある大きなお庭、それって」 「げっっ。あのユーレー屋敷に越してきたのかよ? アソコ住めたもんじゃねぇぞ!」 前に殺人事件とか強盗事件とか夜な夜な変な儀式あったとか、怪談じみた噂が尽きねぇ、団地一ヤベぇスポットだ。 「意地悪な奴でしゅ」 幼馴染みに連れられていく際、チラリと振り返ったぶりっこガキに言われた。 「家の人、きっと心配してるだろうから、急ごうか」 「急がなくていいでしゅ。いろいろ案内してほしいでしゅ」 「そう?」 「でも疲れたでしゅ。おんぶ」 「俺の背中でよければ」 幼馴染みにおんぶされて満足そうに奴の背中に懐くガキ。 夕日をいっぱいに浴びた団地の一本道を進む二人を見送って、俺は、変な気持ちになった。 どっかで見たような気がする。 でもアイツには弟も妹もいねぇし。 気のせーか。 「ちょっといいかな」

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