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つるんでる三人は未だ股の調子が悪いのか揃って欠席、よって昼休み、クラスメートが騒いでる教室の隅っこでコンビニ弁当を食っていた俺は固まった。
転校生が席の横に立っていた。
あんだけ騒いでいたクラスメートは急に黙って教室中がシーーーン、俺の生唾飲んだ音が聞こえるんじゃないかっていうくらいに。
「まだ……食ってる途中だろぉが」
何とか返事をすれば「ほんとだ。ごめんね」と転校生は笑った、何だその笑い方、美人女優か、パーフェクト笑顔過ぎて怖ぇ。
「じゃあ食べ終わったら屋上に来てくれる?」
「は……ッはぁ?」
「待ってるね」
タ……ッタイマンきたーーーッッ。
と……ッとりあえず股間だけは死守ーーーッッ。
「ずっと探していたんだよ」
よく晴れた青空の下。
風が吹く屋上で俺は目を疑いっぱなしだった。
みるみる変わっていった転校生の髪の色。
まっくろだったのが、降り積もった新雪みてぇに、まっしろしろに。
それだけじゃねぇ。
耳が生えた。
狐みてぇな獣の耳が。
ありえねぇ事態に遭遇して凍りついていたら転校生に笑いかけられた。
手摺り前に佇んでいた奴がゆっくり近づいてくるのをただポカンと見つめていた。
「相変わらず狸どもには困ったものだね」
「た、たぬき?」
「僕より先に君を見つけて、安っぽい優越感に浸って、まぁ前と同様お仕置きしてあげたけれど」
「お、お仕置き」
何言ってんだコイツ。
つぅかこの耳なんだ。
ピコピコしてやがる。
う、嬉しいのか……?
「君だって」
あ。
怖ぇ。
そうか。
笑ってるけど、怒ってる、コイツ。
俺を憎んでる……?
「僕を置き去りにして」
動けねぇ。
瞬きだってできねぇ。
「僕のことを忘れてしまって」
股、死守するどころじゃねぇ、なんか殺されてもおかしくなさそうな気配……ッッ。
「意地悪なんだから」
俺は。
転校生に抱きしめられた。
ぎゅうぎゅうぎゅうぎゅう。
窒息するんじゃねぇかっていうくらい。
「もう。ほんとに。信じられないよ。許せないよ」
「ぐ、ぐるじ、ぃ」
「僕はその何倍も何千倍も苦しかったよ」
「な、何言って、わかんねぇ、わかんねぇよッ」
「ほら。それ」
ぎゅうぎゅうぎゅうぎゅう!!
「ぐるじーーーーッッッ」
あんまりにもぎゅうぎゅうされて骨がミシミシ言う、お、折れる、肋折れる、内臓出る。
「ふふ」
不意に止んだ猛烈ハグ。
涙とヨダレで顔面ぐちゃぐちゃになってゼェゼェしていた俺を覗き込んで、転校生の九は、やっぱり笑う。
「僕達の家に帰ろう?」
へっっっっ。
あれっっっ?
ここ、どこだ。
さっきまで学校の屋上にいたのに、屋上じゃねぇ、どっか人んち? 昔話でジィサンバァサンが呑気にしゃべってそーな和な雰囲気で薄暗い……。
「うおっっ!?」
九、いつの間に髪伸びたんだ? すんげぇ伸びてんぞ、ヅラ……? じゃねぇよな?
それに顔も。
オトナっぽくなってねぇか?
服だって着物だ。
どんな仕掛けだよ、コレ。
瞬間移動に早着替え、マジックにしては度が過ぎてねぇか。
それになんで布団の上で押し倒されてんだ、俺。
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