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「メリットが一個もない体にしてごめんね? でも、こんなに可愛いお耳、僕にはメリットの塊でしかないけれど」
朝一から意地悪嫁を褒めちぎる九、愛しの灰色狐耳に頬擦り、頬擦り、します。
「それにしても助平成分とか聞こえたけれど、今、そういう気分なの? それなら喜んで夜伽の続きをしてあげるけれど……?」
コンコン笑って意地悪お兄さんをさらに強く抱いた九ですが。
ノーリアクション、無言でいる意地悪お兄さんにキョトンとします。
ただ腕の中でじっとしている半妖半狐の半人間を覗き込んでみれば。
「………………」
意地悪お兄さん、まっかっか。
まるで生娘のようにおぼこい様子で、口をへの字に曲げ、あやかし伴侶の抱擁にプルプル震えているではあーりませんか。
これまでの過激スキンシップがその体からリセットされたみたいにプルプルしている意地悪お兄さんを繁々と見つめて。
朱色にほんのり縁取られた切れ長な目をおもむろに見張らせた九は。
「っ……!」
ぐるんと相手の向きを変え、正面同士にし、布団の中で改めて意地悪お兄さんをまじまじと見つめました。
見つめられた意地悪お兄さんは。
何故だか徐々に内股に。
……何なんだよ、これは。
……九の視線にすら感じちまう。
……体の奥が疼いて仕方ねぇ。
……今すぐ九に抱かれたい……。
「ひょっとして」
顔に顔を寄せてきたかと思えば、クンクン、クンクン、輪郭に沿って念入りに匂いを嗅いできた九に意地悪お兄さんの両目はうるるんします。
「やっぱり」
ハンドモデル並みにきめ細やかな手がまっかっかな顔をそっと包み込みました。
「とうとう、このときが来たんだね」
「……?」
「ふふ。やっと入り口が開いた」
「???」
ワケがわからずに意地悪お兄さんがうるるんキョトンしていますと、九は、蕩けるように美しい微笑を浮かべて言いました。
「君、みほとができたんだよ」
蕩けるように美しい微笑にあまりにもそぐわないトンチンカンな台詞。
意地悪お兄さんはポカンとします。
「なんてお目出度い日。お赤飯を炊かないとね」
「こ、九、お前どうしたんだ、いきなり頭沸かしてんじゃねぇよ」
「善哉 善哉 」
「大丈夫かよ……おい……」
「それはそれは思い出に残る孕期 にしてあげる」
「み……身籠 ……る……?」
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