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隅々まで磨かれた板間の上に敷いた布団。 「あ……あんまりジロジロ見んじゃねぇぞ、九サンよぉ……」 藍色の羽織を肩から引っ掛けて布団の上に突っ立った意地悪お兄さん。 「そもそも初物に対してタダってのが気に喰わねぇ、このご開帳には金払ってもらいてぇ、こっちの分が悪すぎる」 照れ隠しに先程からベラベラ喋りっぱなしです。 九はというと。 そっぽを向いて突っ立っている意地悪お兄さんの真正面で膝を崩し、堂々とお股を覗き込んでいました。 「う……」 えもいわれぬ心地が勢いを増し、意地悪お兄さんは呻きます。 「発情期、交尾期、生殖期。どれか一つくらい聞いたことあるでしょう。今の君はその真っ只中にあるんだよ。此方(こちら)では孕期(みごもき)と呼ばれてる」 恥ずかしいながらも、自分のムスコに片手を添えて見やすいようにしてやっていたら、あやかし伴侶が親切丁寧に教えてくれました。 「発情期って……犬や猫じゃあるまいし」 「コンコン」 「テメェは年がら年中発情期じゃねぇか」 「あやかしも人も千差万別」 「だからって、こんな……男の体に、いきなり女の……コッチの世界では珍しくも何ともねぇ話なのかよ?」 「そうだね、珍しくも何ともない、よくある話さ」 ふぅ…… 「っ、っ、っ! いっ、息吹きかけるんじゃねぇ……」 くぱぁ…… 「っ、っ、っ!? おい、お触り禁止!! 金とるぞ!!」 本当は今すぐにでも狐夫に抱かれたくて堪らない意地悪お兄さん。 でも虚勢を張って声を荒げていたら九にクスリと笑われました。 「もうすっかり支度は整ってる」 半妖半狐で半人間の意地悪お兄さんでしたが。 九と共になって、その欠片を与えられ続け、今や人間の血は大分薄れてきているようです。 「君と僕のこどもを育む寝床がここに」 お腹を優しく撫でられて意地悪お兄さんは「んっ」と声を詰まらせました。 「後は」 出来上がったばかりの、ふっくらした肉襞(にくひだ)をむにゅっと摘ままれると、胎底がとんでもなくムズムズ、ムズムズ。 「こ……九ぉ……」 密着し合う左右の肉襞の間にツプリと沈んだ中指の先。 薄い肉ビラが守る蜜穴にそっと押し当てられます。 「ここに僕の子種をたっぷり注ぎ込めばいいだけ」 「っ……そ、それでもう? お前に種付けされたら、もう? 俺にあかちゃんが?」 これまでに感じたことのない刺激に成す術もなく昂ぶり、同時に不安がる意地悪お兄さんに九は尋ねました。 「君は嬉しくないの?」 艶治な目許に雪色の長い髪を滴らせ、上目遣いで見つめてきた九。 色香に満ち満ちた眼差しに意地悪お兄さんの心臓は飛び跳ねます。 出来上がったばかりのアソコが猛烈キュンキュンしてしまいます。 自分の体なのに、そうでないような、へんてこりんな感覚でした。 「僕とのあかちゃん、ほしくないの……?」 勝手に体が濡れる……。 頭も頭で九を欲しがる……。 でも心がついていかねぇ……。

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