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「虎の方を庇うなんて酷いお嫁さん」 「黄金(ホアンジン)に傷でも一つつけたら、後で性悪弟二匹や緋目乃がうるさく言ってきそうだろ」 「やめて」 「何をだよ?」 「あの虎を(まこと)の名で呼ばないで」 着流し姿の九はどろどろなんざ一切構わず、べしょべしょ作務衣姿の意地悪お兄さんに頬擦りし、お願いしました。 「ねぇ、君は僕だけを見て? 僕だけを必要として?」 睫毛が触れ合いそうなくらい顔を近づけます。 「君のすべてを僕にちょうだい……?」 そうして自然に重なった唇。 吐息一つ逃がさないよう深く口を塞ぎ、同化したがるように嫁舌に絡みついてきた狐夫の舌。 激しい接吻によろめいた意地悪お兄さんは背後の柱に背中をぶつけました。 「ん……っ」 九にたんまり唇を吸われます。 ほんの束の間忘れていた疼きがぶり返し、意地悪お兄さんは全身を紅潮させました。 下の作務衣を限界まで捲られ、太腿を直に撫で回されると、自らも擦り寄り、浅ましげな腰遣いで布越しに狐夫に股間を押しつけました。 意地悪お兄さんの破廉恥行為に九は切れ長な目をスゥと細めます。 火照る舌を吸いながら張りのある嫁尻を鷲掴みにしました。 「んんん」 両腕の輪の中で意地悪お兄さんはもどかしげに仰け反り、喉骨をヒクヒクと震わせ、薄紅の下唇にかじりつきました。 「ふふ……僕の唇、食べたいの? 君になら食べられてもいいよ……?」 作務衣を臀部の割れ目に纏めて食い込ませ、女のようにしっとりした両手で直に尻たぶを揉みしだく九を、意地悪お兄さんは見上げます。 「虎より狐の方がおいしそうでしょう? それとも両方、味見したい?」 「このクソ嫉妬旦那様め、そんなに俺が信用ならねぇのかよ」 「だって長男虎に優しいんだもの、君」 「俺が好いてるのはテメェだけに決まってンだろ」 えげつない手つきで官能的に嫁尻を揉んでいた手がぴたりと静止しました。 「俺の夫はこの狐だけだよ、お前様……?」 柔らか味一つない両手で頬を包み込まれると、九は、古より鼓動し続けている心の臓をより一層強く打ち鳴らしました。 「もっと」 「うん……?」 「もっと言って」 「……好きだよ、九」 「もっと」 「お前のこと好きだ」 血潮にも似た色濃い夕日に浸かった板間の一角。 柱に沿って持ち上げられ、両足が浮き、あやかし伴侶に軽々と抱っこされた意地悪お兄さん。 雪色の長い髪を巻き込んで自分も抱きつき、剥き出しの両足を九の腰にしっかり回し、旦那様との熱い甘い接吻に夢中になりました。 そして満たされる口の中のえもいわれぬ感覚に、ふと、思い当たるのです。 ーー孕期に突入してからというもの、ずっと体に纏わりついていた、形容し難いヤラシイ心地ーー なんだ、そっか。 九の口の中にずっといたんだな、俺。

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