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「う……うそだろ、俺から乳って……うそだよな、なぁ、九……?」
「旦那様がいい」
「おいっ、クソ旦那様っ、うそって言え!」
九は笑いながら上半身も起こしました。
驚きの余り、正気を取り戻して狼狽している意地悪お兄さんの胸に改めてかぶりつきます。
長細い五指を嫁尻に食い込ませ、肉壺内の摩擦感を強めようと、ゆっさゆっさ揺さぶります。
「あんっ、やめっ……お、奥っ、擦れる……っ」
「出るよ? 本当にね? いずれ胸が張って今よりも膨らんでくるよ?」
「う、うそだぁ……お……俺が母乳出すなんて……っ」
「きっとおいしい乳が出るに違いないね」
「おいッ、何の励ましにもなんねぇよッ……あっ、ぁっ、ぁぅっ……奥……っ……ずんずんしすぎ、だ……っ……っ」
「また、たっぷり種まきしてあげる……」
立派な狐耳をピンと立て、次の種付けに向けて一気に加速した九に全力でしがみついた意地悪お兄さん……。
月明かりでほんのり白く染まる山の奥の奥。
闇よりも濃い漆黒の月影を引き摺って幾星霜の夜を渡る、あやかし共。
「なぁ、九、お前でっかくならねぇのか」
乳の件はおいておいて、しわくちゃの布団に倒れ込んで一休みしていた意地悪お兄さんの問いかけに九は首を左右に振ります。
「あの姿だと壊しかねないからね」
「その姿でも十分激しかったじゃねぇか……」
「この姿でいるときよりも、あやかしの本能に忠実になるから」
「でっかくなれよ」
「君、僕が言ったこと聞いていた?」
「そんな簡単に壊れるようじゃあ、お前の嫁務まんねぇだろーが」
小休止のため意地悪お兄さんからちょこっとだけ離れ、板間に座り込んで、開かれた障子の間に満ちる月夜を眺めていた九。
のそりと起き上がった意地悪お兄さんに後ろから抱きつかれると、くすぐったそうに微笑んで、背中に顔を埋める嫁を肩越しに見下ろしました。
「あの姿になったお前、おっかねぇけど、なんつぅか、神々しいっつぅか……綺麗だからよ……あのお前にも抱かれてみてーんだよ」
これまた初耳である衝撃的発言に九は頬を紅潮させます。
「……君って嫁は……」
……やっぱりやめときゃあよかったかもしんねぇ……。
どでかい化けもん狐の姿になった九を前にして意地悪お兄さんはゴクリと喉を鳴らしました。
「おい、九、もうちょっと縮めろ」
「ギシャアアアアッッッ」
「いちいち怒んじゃねぇッ……クソ、ガラにもねぇことなんか言わなきゃよかった……ちぇっ」
自分の言動を早速後悔している意地悪お兄さん、往生際が悪いのなんの、まーた舌打ちまでして困った嫁です。
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