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雪色の長い髪を靡かせ、ものものしげに牙を剥く次男と末っ子の間にすっと立つと、長男を抱っこしている黄金と対峙します。 「ここも家になるのか? ここは外だ」 「僕のテリトリーだからね。我が家も同然さ」 虎の匂いを嗅ぎ当てるや否や、風を切るほどに目まぐるしい韋駄天ぶりでやってきた九。 「おとーさん」 黄金の腕の中に仕舞われている我が子の九太を見やり、次に黄金を冷たく見据えます。 「九太に会うのは僕の許可を事前に得てから。そう約束を取り交わしたのをお忘れかい」 「忘れていないよ。ただ、子ぎつねに会う許可を得ようにも、親ぎつねがなかなか捕まらない」 「僕を捕まえる、だって?」 未だに黄金を威嚇している、自分の腰の高さまである九朗と九彦を一切咎めることもせずに。 満開の夜桜にも厳かに煌めく秋月にも勝る妖しげ綺麗な九は、その眼差しに深く濃厚な殺気を絡めて微笑しました。 「緋目乃に気に入られているのをいいことに無断で境界線を越え、ずかずかと上がり込み、我が子を(かどわ)かそうとするなんて、ね」 物の怪といえども物の怪の道理があります、掟があります。 「掟破りと見做してこの場で屠ってあげようか」 妖狐(ようこ)妖虎(ようこ)はいつになく凄艶なまでに研がれた眼光を交えました。 正しく一触即発ムードです。 凍てつくお山の空気がさらに張り詰めて、次の瞬間には雪原が鮮血に染まってしまいそうな緊張感に漲りました。 そしてーー…… 「キューーーーー………ン」 妖狐と妖虎は同時にハッとします。 「けんか、やだ」 黄金の懐で九太が鳴き……泣き出しました。 「おとーさん、黄金、九朗も九彦も、けんかしちゃ、やだ」 自分を包み込むカンフー服にしがみつき、ぽろぽろ涙をこぼして、お願いします。 「けんかしないで」 狐耳と尻尾を震わせて泣く灰色ぎつね。 くすん、くすん、小さな小さな泣き声がお山の静寂に溶けていきます……。 「ぎゅーーーーーーーッッ!!!!」 次いで響き渡った野太い鳴き声。 土の中で休んでいた動物たちは眠りを妨げられて迷惑千万、寒い中を動き回っていた動物たちはびっくらたまげて、木の天辺から慌ただしく飛び立っていった鳥たち。 意地悪お兄さん狐です。 銀世界に今にも溶け込みそうな真っ白毛は美しいものの、ぎーぎーうるさく鳴いて雪の上を駆け、こちらへやってきます。 狐夫より一足遅れて現場へ到着。 途中でくるんと一回転。 着地したときには、もう、人の姿でした。 「おい、コラぁ!!!! 九太泣かしてんじゃねぇぞ!!??」 デリカシーもマナーも皆無な大声に真っ先に反応したのは九太でした。 「おかーさん、おかーさん」 黄金の懐から両手を伸ばして母を呼びます。 呼ばれた母は黄金から受け取った我が子を掻き抱きました。

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