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20-10

「一度閉じてしまって、あれきりだね」 「……孕期(みごもき)のこと言ってんのか」 「そうだよ」 マイホームなる藁葺き屋根のおうち。 囲炉裏で火の粉が爆ぜてパチパチと音を立てます。 「ただの男の体じゃあ……物足りねぇって言いてぇのかよ……」 囲炉裏のすぐそばで仰向けになった意地悪お兄さんの言葉に九は切れ長な目を見張らせました。 「とんでもない」 作務衣の下を脱がされて下半身すっぽんぽん、着流しを色っぽく乱した九に覆い被さられていた意地悪お兄さんはジト目で狐夫を見やります。 三つ子を生んだ後に閉ざされた蜜穴。 よって、いつ訪れるかわからない次の孕期まで、ふたりがこどもを授かることはありませんでした。 「もしも次が来たら、どうしようか、四人目」 雪色の長い髪がまるで(とばり)のように意地悪お兄さんの顔の左右へとかかっていました。 後孔をぐちゅぐちゅと掻き回す夫男根。 尽きることない底なしの肉欲に従って執拗にゆっくりじっくり突き上げられる尻膣。 「んんン……っ……俺は……今のままでいい……」 唇をひん曲げていた意地悪お兄さんは片腕で顔を隠してから答えました。 「もう十分、騒がしいし……なぁ、早く終わらせろよ、九……あいつらがいつ帰ってくるか……」 「帰ってきても僕は気にしないけれど」 「阿呆狐!! ちったぁ気にしろ!!」 顔を隠したまま意地悪お兄さんは倫理観がなっちゃあいないあやかし伴侶を怒鳴りつけました。 いいところを強めにグリ、グリ、されると怒りと呼吸を忘れて大きく胸を反らします。 作務衣越しに両方の乳首を同時に爪弾かれると「ん、く……っ」と喉奥に甘い悲鳴を詰まらせます。 作務衣の内側に潜り込んできた五指で丁寧に捏ね繰り回されると堪らずエビ反りになりました。 「あっ、ぁっ、ぅっ……ン……っ」 「僕のことを非難していたけれど、お誘いすれば君だって。年がら年中乗り気で相手をしてくれるよね?」 「はぁっ……はぁ……っ……は……」 片腕で頑なに顔の上半分を隠して、溢れ出しそうになる喘ぎ声を我慢して。 意地悪お兄さんは何やらぼそぼそ呟きました。 「うん?」 九が聞き返せば腕越しに涙ぐむ片目でガンを飛ばしてきました。 唾液の糸引く口内を曝し、狐夫にちゃんと届くよう、不安定に上擦る声を大にして言います。 「今のままで、十分、幸せだから……ッ……これ以上なんもいらねぇって言ってンだよ……!」 腕の下でいつにもましてドドドド赤面している嫁に九は釘づけになりました……。 「かまくら、あったかい」 一方その頃、九太は久方振りのかまくらの居心地を満喫していました。 「この真っ白いおうち、雪がいっぱいふったときだけ」 黄金とのお別れは淋しかったですが。 ちゃんと約束を交わしたので不安はありません。 今はもう次の再会が楽しみで、悲しい気持ちは和らいでいました、それにーー 「キュウーーー……」 「キュルルルル」 弟狐も一緒にいるから平気です。 立派なかまくらの中で狐姿のふたりは兄の九太にくっつきっぱなし、片時も離れようとしませんでした。 先刻、おうちでお昼寝から目覚めたら一緒に寝ていたはずの九太がいなくなっていて、びっくり仰天、勝手にひとりで山へ遊びに出かけた兄の後を慌てて追いかけたものです。 「キューーーン」 特に片方の弟狐の甘えっぷりは尋常じゃあありませんでした。 九太の顔をべろべろ、背中に頭をごしごし、すぐそばをぐるぐる。 片方が膝枕してもらって寝始めたのに対して一向に落ち着く気配がありません、ときどき九太が頭や体を撫でてやれば興奮してガチで噛みつきそうになったり。 「めっ」 自分より小さな兄にやんわり怒られると、ハッとして後じさり、でもまたすぐに飛びついて、べろべろ、ごしごし、ぐるぐる。 「いいこ、いいこ」 屈託ない笑顔を向けられると舌までだらんと垂らしてハァハァと息を荒げます。 兄狐の笑顔を独り占めできる喜びにどっぷり浸かって、居ても立ってもいられず、自分より小さな体に夢中になってのしかかりました。 「あ」 膝枕していた弟狐が放り出され、それでも寝続けている様にほっとして、ずっと自分を凝視し続けている切れ長な目を見返します。 「兄さんを虎なんかに渡したくない」 人の姿になった次男の九朗は滑らかな白磁の頬を紅梅色に染め、ひどく切なげに眉根を寄せました。

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