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20-12
「ん……ん……ン……」
幾度となく繰り返される接吻。
唇を閉じたり開いたり、舌と舌も結んで離して、また結んで、いつまで経っても飽きの来ない不埒なじゃれ合いに興じるふたり。
「ん、む……む……っ……っ」
「……本当はね。口を聞くのだって、いや、見つめ合うのもいただけないんだよ」
何かにつけては小言を挟んでくる狐夫を意地悪お兄さんはじれったそうに睨んでから、その直後、ついつい吹き出しました。
「そっちの餅は焼かなくていーんだよ……いつまでヤキモチこさえ続けるつもりだ、お前は……」
失笑された九もコンコン笑い返します。
「君といる限り、ずっと」
意地悪お兄さんは……あやかし狐と共に過ごしてきた五十年という歳月も忘れて、生娘みたいに胸を躍らせました。
同時に夫男根をぎゅうぅううぅうッッ、それはそれは熱烈に抱擁しました。
「う、ぅっ、ぅ……」
「ふふ……そんなに僕が欲しくて堪らないのかい」
永生 き物の怪ライフにおいて五十年という歳月など瞬きにも等しい……は、さすがに大袈裟かもですが、まだまだ余裕で新婚気分に浸かっている古狐。
丸出しのお尻を掴み直して自身の腰を突き上げます。
未だに聞き分けの悪い反抗的な肉圧を躾けるように人間男根で深く強く攻め立てます。
「あっ、あっ……これっ……」
「気持ちいい……?」
意地悪お兄さんはコクコク頷きました。
「僕も気持ちいい……もう溢れてきそう……久し振りだから、ね……君にたっぷり注ぎ込んであげる……」
陶然とした色っぽい声色で耳打ちされながら、尻奥まで小刻みに一頻り貫かれて、ガクガクが止まらない意地悪お兄さんは思いきり仰け反りました。
「んーーー……っっっ……ここ、の……っっっ……!!」
あられもなく達している最中、宣言通り、九にたんまり種付けされました。
濃厚白濁でたちまち泡立った繋ぎ目。
恍惚感に射竦められて痙攣する肌身。
それでも狐夫は止まりません。
「ッ……おい、こらぁッ……こンの助平夫ッ、やめッ、当たり前みてぇに二回戦突入すんなッ」
「やだよ、久し振りなのに一回こっきりだなんて」
「ひ……ッ……久し振りって……一昨昨日にシただろーーーーがッッ……!!」
邪 に揺れ続ける九の肩を引っ掴み、意地悪お兄さんが逃げたそうにすれば、今度は上半身をがっちりホールドされて身動きがとれなくなりました。
それでも腕の輪から必死こいて抜け出そうと身悶える意地悪お兄さんに九はコンコン囁きかけます。
「前みたいに三日三晩中、君と繋がって愛し合いたいんだけれど、どう……?」
……この生涯現役絶倫狐、誰かなんとかしてくれ……。
しっかしまぁ、途方もなく手に余る旦那様が相手でよくこうも順調(?)に夫婦仲が続くもんだよな。
「海並みに器の広い俺のおかげだな」
「……おかーさん……?」
「お。悪ぃ、九太、起こしちまったか」
夜でした。
雪を反射してほの白い外の薄闇は粛々と凍てついて、どこまでも清らかに澄み渡っていました。
「おかーさん」
薄暗い板間であやかし狐姿の九を寝床にして、同じく狐姿の九朗と九彦とも身を寄せ合って、極上のぬくぬく感に包まれていた意地悪お兄さん。
腕の中で寝惚けている九太の灰色頭を撫でてあげます。
「……くぅ……」
九太はすぐに夢の続きへと戻っていきました。
九朗と九彦も撫でてやれば「きゅぅきゅぅ」と鳴いて、九彦は意地悪お兄さんにもっとくっついてきました、九朗の方は九太に擦り寄っていました。
……あったけぇ……。
ぴょっこんしている雪色の狐耳をぱたぱたさせて意地悪お兄さんは一人こっそり笑います。
芽吹きの春、梅雨が明けてからの眩い夏、実り豊かな秋もいいですが。
九や我が子らの温もりで寒さをしのぐ冬もそれはそれで悪くない、なーんて、しみじみ思いました。
雪はもうやんでおりましたが。
狐やコンコン、一家で山の中。
寝息を立てる狐夫のモフモフ巨躯に耳を押し当て、古より奏で続けられている鼓動を寝物語代わりにして、意地悪お兄さんもまた眠りに落ちていきました。
想い人と結ばれたあやかしたちの永い永い夜が紡がれていきます……。
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