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第31話 覚悟。

尊は用意した書類を見つめながら、考えを巡らせていた。 優多と2人で暮らす為の準備は万全に整えた。 後は両家の親をどう説得するかだ。 失敗する訳にはいかない。 慎重に且つ迅速に対処しなくては。 両家の親を説得する自信が有ると言ったら嘘になる。 だが、やるしかないのだ。。 尊は覚悟を決めると、書類をまとめ始めた。 不意にトントンッとドアをノックする音が聞こえ、目を其方に向けた。 「尊坊ちゃん。樹季さんがお見えです。」 樹季? 今日は会う約束してない筈だよな。。? まあ良いか。 どのみち樹季に会いに行くつもりだったから、返って手間が省けたな。 「瀧さん。樹季に部屋に入って貰って下さい。」 尊が、瀧に告げるのと同時に、ドアが開き、見慣れた顔をした人物が其処に立っていた。 「いきなり来て悪いな。」 にやにやした顔をしながら樹季が部屋に入って来た。 「それが申し訳ないって思う人間の顔か?今、お茶出すから、座ってろよ。」 尊が苦笑しながら、キッチンへと向かおうとしたが、瀧がそれを遮った。 「私が此方にお持ちしますので、お2人で話しをされていて下さい。」 「いえ。俺が自分で。。」 尊が言い終わらない内に、瀧は颯爽と部屋から出て行った。 彼は間なしに戻って来ると、紅茶とケーキを出し、2人に一礼してから、再び部屋を後にした。 尊は、椅子に腰を掛けて樹季に向かって尋ねた。 「どうした?何か話でも有るのか?」 「話が有るのは、お前の方じゃないのか?」 「。。。」 尊は、優多の事を樹季に相談したいと思ってはいたが、彼に自分の計画を伝えたら必然的に巻き込んでしまう事になる。 それを危惧し、話しても良いものか躊躇っていた。 樹季は、尊が自分を関わらせて良いのか憂慮している事に気付き、彼が自ら話す様に促した。 「言いたい事が有るなら言えよ。俺達の間で遠慮と隠し事なんて言葉は必要無いだろ?」 樹季の言葉を聞き、尊は意を決して、自身の想いを言葉にした。 「樹季。」 「ん?」 「もしも、、俺が優多と2人で暮らしてアイツの面倒をみるって言ったら、お前賛成してくれるか?」 「。。は?それは現実的に考えて不可能に近いだろ。俺も確かに優多の傍にいてやりたいよ。でもお前まだ15歳だぜ?俺だってお前と一歳しか違わないんだぞ?」 樹季は、尊の覚悟を確かめたくて、ワザと突き放した言い方をした。

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