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第35話 内なる攻防。

大人ってややこしいな。。 彼にも、父親の意図するところが分かっている様だ。 樹季は、2人の内なる攻防を、複雑な思いで眺めていた。 尊は、徳人の眼を真っ直ぐに見つめ返し、 「やります。」 と一言だけ告げた。 息子の返事を聞き、父は満足気に頷いた。 「よし。決まりだ。それから、嘉神さんに了承を得る事が出来て2人で暮らす事になったとしても、偶には優多と家に帰ってきなさい。一緒に食事でもしよう。」 徳人の表情が和らかくなり、優しい口調に変わった。先程迄緊迫していたのが嘘だったかの様に部屋の中は穏やかな空気に包まれた。 「尊、返事は?」 「はい。必ずそうします!父さんありがとう!では、おじさんに会いに行ってきます。」 そう言って、嬉しそうに家を飛び出して行った。 樹季は、彼が嬉々として飛び出したのを見送りながら、ゆっくりと腰を上げて尊の両親に一礼した。 「さてと。おじさん、おばさん、ありがとうございました。俺もこれで失礼します。」 「樹季は一緒に行かないのか?」 「はい。尊に任せます。俺は、これから姪っ子達とデートなんで。」 笑顔でそう言って、樹季も壬生家を後にした。 彼等が出て行くと、父子の会話をずっと黙って聞いていた、尊の母が口を開いた。 「あなた、私達も一緒に行った方が良かったんじゃない? 」 「いや、尊に任せよう。彼が1人で行って、優多の父親に納得して貰う事が出来ないなら、これから彼を守っていく事なんて到底無理だろ? 」 「確かにそうね。でもあの子ったら…ふふっ 。」 「ん?どうして笑ってるんだ?」 「いえね。あの子、あんなに嬉しそうにして、まるで義理のお父さんに結婚のお許しを貰いにでも行くみたいじゃない? 」 「ははっ。言われてみればそうだな 。今はまだ子供だが、アイツにも、いつかそんな相手に出会える日が来るだろうな 。」 「ふふっ。そうね。」 2人は、息子の幸せな未来を想像して、微笑みを交わした。。

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