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第39話 新たな環境。
嶺多が出国して直ぐに、2人は尊が用意した一軒家に住み始めた。
事故から2ヶ月が経っていた。
優多は大分落ち着きを取り戻し、身近な人々とは少しずつ会話をする様になり、時折笑顔を見せる程になっていた。
2人きりの生活にも慣れた。
だが、以前の明るく無邪気な姿は影を潜め、少し大人びた雰囲気の少年になっていた。
一緒に暮らし始めた頃は環境の変化に戸惑っていたが優多だったが、自分を支えてくれ、常に傍に居てくれる彼との暮らしはとても居心地が良く、素の自分でいられた。
2人は早めの朝食を済ませ、リビングでホットココアを飲みながら寛いでいた。
この2ヶ月の間、優多は学校へは行かず、自宅学習をしていた。
優多が落ち着く迄はと、尊も彼に付き合い学校を休んでいた。
優多は彼の優しさに甘えてばかりの自分が嫌で、ある決心を口にした。
「あのさ。俺、来週から学校へ行くよ。」
「本当に大丈夫なのか?無理はしなくて良いんだぞ。」
「うん。もう大丈夫。4月からは、尊達の学校の中等部に入るから、今の学校の皆と会えるのも後少しだしね。」
尊は当初、自分の通っている小学部に優多を転入させようとも考えていたが、全ての環境を変えてしまうのは、返って彼にストレスを与えてしまうのでは。。と思い直し、後2ヶ月程で卒業という事も有り、優多の父親と話し合った結果、小学部は今の学校に通う事にした。
「じゃあ。来週から、俺も学校に戻るよ。家の車を寄越してもらうから、学校へは、それで通えよ。反対しても無駄だからな。」
優多は歩いて行ける距離だからと断ろかとも思ったが、尊の心配そうな表情を見て、彼の好意に甘える事にした。
「うん。分かった。そうさせてもらうよ。」
てっきり断られると思っていた尊の予想に反して、優多が自分の申し出を素直に聞き入れてくれ、安堵の表情を浮かべた。
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