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第41話 出逢い。

都内の一等地に有るホテルの一室で、被害者遺族の話し合いが行われていた。 病気で父親が亡くなり、間なしに事故で母親を亡くした 至(いたる)は、ホテルに着いても話し合いに参加する気になれず、自分の代わりとして、叔母に話し合いに参加して欲しいと頼んだ。 至は庭園に出て、遊歩道を巡り歩いていた。 「寒いな。。」 ホテルに上着を置いて来た事を少し後悔したが、大人達の話し合いの場に引き返す気にもなれず、肩をすくめながら散策を続けた。 樹木が生い茂る場所に差し掛かり、ふと横を見ると、空を見上げている1人の少年に目を留めた。 彼は両手をかざす様な形にして、上に掲げていた。 少年に近付いてみると、鳥の雛が彼の手の平におさまっていた。 彼が見上げている方に目を向けると、落葉樹の上に鳥の巣が在るのが見えた。 「親と離れてしまうのは寂しいよな。。」 至は、鳥の巣を見上げながら呟いた。 彼の声を耳にした少年は、隣に人が立っている事に初めて気づき、こちらに顔を向けた。 だが、話しかけて来る気配も無く、じっと至の顔を覗き込んで来た。 「ちょっと待ってろ!」 至は、彼にそう告げると、遊歩道の入口の方に戻り、休憩を取っていた庭師に声を掛けた。 「おじさん 申し訳ないけど、この脚立ちょっとだけ貸して! 」 「おいっ!待て!坊主!」 「直ぐに返すから〜!」 驚いている職人を尻目に脚立を持ち上げ、走って少年の所に戻った。 彼は何も言葉を発しはしなかったが、脚立を抱えながら戻って来た俺を見て、不思議そうな表情を浮かべた。 俺は彼に近付き、 「雛!」 そう一言告げると、彼は頷きながら、雛を至の手の平にそっと乗せた。 彼に脚立を支える様に指示をし、よろめきながらも何とか雛を鳥の巣に戻し終えた。 脚立を下りた俺に少年は近づいて来た。 彼は口を閉ざしたまま、上着のポケットから1枚のハンカチを取り出し、俺の額を拭った。 鳥を落としてしまわないかと緊張し、いつの間にか汗をかいていた様だ。 「雛は親の元に無事戻ったぞ。これで一緒に居られるな。」 至の言葉を聞き、彼は頷いた。 表情こそ変わらなかったが、少年の喜んでいる様子が感じ取れた。

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