「叔母さん、アイツらには、事故の話はしたの？」 「いいえ。お姉さんが亡くなった事は知ってるけど、事故の事はまだ話していないわ。あの時、主人の撮影を見学しに、2人共アメリカに行っていたから。」 「うちの子達、貴方のご両親にとても懐いていたでしょ？亡くなったのを知った時もかなりショックを受けていたのよ。それに、もしあの2人に話すなら、先ず貴方が落ち着いてからの方が良いと思って。。」 「そっか、じゃあ事故の事は話さなくて良いよ。これ以上悲しんで欲しくないし。」 「そう？貴方がそう言うなら。。分かったわ。」 「ねえ。本当にアメリカに戻ってしまうの？私達と一緒に暮らしたらどう？私は仕事が忙しくて余りお世話してあげられないかも知れないけど、私は貴方が来てくれたら嬉しいし、子供達も喜ぶわ。」 「叔母さん、気持ちは嬉しいけど、当分の間は、あっちで暮らすよ。寮だから不自由な事も無いし、叔父さんも仕事でアメリカに来る機会が多いだろ？何か有ったら叔父さんに頼るから大丈夫だよ。」 「全く。。貴方は本当に頑固ね。良いわ。但し、どんなに長くても、高校卒業するまでよ。その後はこっちで一緒に暮らしましょ。それから、夏休みとか学校が長いお休みの時は帰って来なさいよ。」 「分かった。そうするよ。ありがとう。」 至は、叔母の気遣いは嬉しかったが、今は、母親が亡くなったこの地に居たくなかった。 「叔母さん。家に着くまで寝てても良い？」 「いいわよ。あっ！私の事叔母さんて呼ばないで名前で呼んでよ。」 「叔母さんって言われると一気に老け込んだ気がしちゃうわ。」 「わかったよ。次からは、そうするよ。着いたら起こして。」 苦笑しながら叔母にそう告げると、至は眼を閉じて、あの少年の事を思い出していた。 俺と同じ痛みを抱えている少年。。 名前は確か。。 そうだ、優多だ。 彼の父親がそう呼んでいた。 優多。 君が与えてくれた暖かな抱擁と慰めのおかげで、俺の心は少し癒された様だ。 またいつか、、 何処かで会えるといいな。。 その時迄、君のマフラーは預かっておくよ。 目の前に居ないあの少年に話しかける様に心の中で呟き、至はいつしか眠りに落ちていた。。