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第46話 触れるだけの抱擁。

尊は帰宅してから2時間もの間、家中をうろうろと歩きまわりながら優多の帰りを待ち侘びていた。 遅い。 遅すぎる。。 もう夜の9時だぞ。 もしや事故にでもあったんじゃ。。 いや。 無いな。。 それは無い。 まさか。。 おじさんに会って、やっぱり気が変わって一緒に行く事にしたとか。。? いや。 万が一そうなら、連絡が来る筈だ。。 他に考えられる事と言えば。。 優:只今〜。 尊:お帰り優多! 優多:荷物まとめに帰って来た〜。 尊:えっ?何言ってんの?俺とずっと暮らしていくんだろ? 優多:う〜ん。そう思ったけどやっぱり止めた。樹季と暮らす事にしたよ。 尊:えっ?何で?理由は?俺と暮らすの嫌になったのか? 優多:だって尊兄、今朝キスして来たろ?男同士でキスとかあり得ないし。。元気でね! 尊:優多〜! はっ! 何だこれ? 不安の余り、樹季が考えつきそうな下らない妄想を繰り広げてしまった。。 でも。。 本当に今朝の事怒ってるとか。。? それで帰って来ないのか? 俺の事嫌いになったとか? 尊がそんな事を考えていると、玄関のチャイムが鳴り、鍵を開ける音が聞こえた。 「只今〜。」 優多だ! 帰って来た!! 逸る気持ちを抑えながら玄関へと向い、何事も無かった様な顔をして、彼を出迎えた。 「お帰り。遅かったな。おじさん元気にしてたか?」 「うん。。」 「ちゃんと空港に行って見送って来たか?」 「うん。。。」 やっぱり今朝の事怒ってるんだな。。 きちんと謝罪した方が良いな。 「あのさ。。今朝の玄関での事なんだけど。。っつ」 不意に、優多の身体が尊に近づき密着して来た。 背中に手をまわされ、鼓動が早くなるのを感じ、俺の言葉は戸惑いで遮られた。。 優多の尊を抱き締める力が強まり、それに呼応するかの様に尊は自分の胸の動悸が先程よりも高まっている事に気が付いた。 それは、今迄に感じた事が無い不思議な感情。 「。。。優多?」 そんな尊の動揺を余所に、優多は心許なげに呟いた。 「少しだけ。。このままで居させて。。」 尊はそっと手を伸ばし、触れるだけの抱擁を彼に返した。

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