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第49話 俺の居場所。
自分が彼の手首を強く掴んでいた事に気が付き、慌てて手を離した。
そして優多を自分の元へ引き寄せ、そっと抱きしめた。
「ごめん。。俺が悪かった。。」
「少し痛かっただけ、もう大丈夫だよ。」
優多はそう言ってから、口の端をキュッと結んだ。
彼の表情からは、言いたい事を我慢している様子が伺え、尊は優しい口調で優多に話し掛けた。
「ごめん。。お前に寂しい思いをさせてるのかなって思ったら、やるせなくなって、つい責めるような態度を取ってしまった。情け無いな。。」
尊は自身の胸の奥底に埋めてあった不安の種が、芽を出し成長していく感覚に陥った。
優多は、本当は父親に付いて行きたかったのではないか?
もし彼がそれを望んでいるのなら、送り出してやらなければ。。
例え、それが自分に取って辛い現実だとしても。。
尊は、一呼吸おいてから覚悟を決め、再び口を開いた。
「もし。もしも。。お前がおじさんと離れて、俺と暮らし始めた事を後悔してるなら。。俺に気兼ねなんてしなくて良いんだ。お前のしたい様にすれば良い。」
優多は尊の話を聞き終え、彼の心を傷つけてしまった事に気付いた。
同時に自分を手離しても構わないと告げる尊に、何故か酷く苛立ちを覚えた。
「そんな事一言も言っていないだろ!尊兄は、俺との暮らしを後悔してるのか?」
尊は、慌てて首を横に振って、彼に自分の本音を伝えた。
「違う。そうじゃないんだ。ただ、お前の気持ちを尊重したいと思っただけだ。俺は、お前におじさんの所に行って欲しくないし、ずっと俺の傍に居て欲しいと思ってる。」
「。。。」
「でも、それは俺の気持ちであって、優多がそれを望んでいないなら、俺はお前を引き留められない。。」
尊の不安気な表情を見て、黙ったまま背伸びをして、泣いている子供をあやすかの様に、優多は彼の頭を優しく撫でた。
優多は尊の事を自分の家族と同じくらい大切な人だと思っていた。
自分に寄り添い、支えてくれる彼を、優多はとても愛おしく感じた。
「俺は、後悔なんかしていない。この家で暮らして行きたい。俺の居場所は、尊兄の隣だから。。」
優多は愛情に満ちた目で尊を見つめながら、自分の正直な気持ちを彼に伝えた。。
だが、少なくとも今の優多にとって、それはあくまでも家族としての愛情に過ぎなかった。
彼は、自分の言動が尊を苦しめる事になるとは、その時はまだ想像すらしていなかった。。
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