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第16話

性別に寛容なこの学校には、αもΩも多く在籍する。αは特進科に多いが、普通科にも少ないながら存在した。 今水樹の目の前にいる2年生の様に。 「佐藤せんぱ…」 「やっぱり…すげぇいい匂いすると思った…」 座り込んだまま動けない水樹に、じわじわ近寄ってくるその人が、快活で面倒見のいい、水樹も懐いている先輩と同一人物だなんて。 「や、来るな…来るなってば!」 Ωの発情期のフェロモンに当てられてヒート状態に陥ったαがどうなるのか、痛いほどよく知っている。 水樹は震える手で首輪をギュッと握った。 しっかりと鍵がかかっている。 それにほんの少しだけ安堵したが、迫り来る手は止まってはくれない。 ついにその手が水樹の肩にかかったその刺激だけでピクンと跳ねた身体は、いとも簡単に押し倒されてしまった。 打ち付けた背中は痛いはずなのに、痛みさえも快感に直結する。 嫌になる程、浅ましい身体だ。 「や、だ…やめてせんぱ…んあぁっ!あ…」 べろりと耳殻を舐められると、ブワッと一気に自分のフェロモンが増したのを感じた。 それに煽られたのか、荒々しい手付きで佐藤は水樹のワイシャツを引き千切ってベルトに手を掛ける。 あっという間に剥かれてしまった水樹はなんとか拒絶の意を示したくて首を振ったが、聞き入れて貰えるわけもない。 「っは、んん…ん、いやぁ…」 胸の尖りをくにくに転がされると、もう身体は快感に支配されてしまう。 嫌なのに、本当に嫌なのに溢れるほど濡れてヒクヒクしている後孔に無骨な指が侵入してきた時、涙が出た。 それが嫌悪の涙なのかそれとも快楽による涙なのか、水樹本人にももはや不透明だ。 顔も体も思考もドロドロに溶かされていく。ただハッキリしていたのは、猛烈な嫌悪感だけ、それも気持ちの問題だ。 身体は少しも嫌がっていないことなど、水樹自身わかりきっていた。 「や、め…いや…あ、う…んんっ」 猛烈な嫌悪感に苛まれながら熾烈な快感に飲まれて、全力で抵抗しているのに、それは自分でわかるほど弱々しかった。 後ろから押さえつけられて腰だけを高く上げさせられて、脚に伝うのは自分の愛液だ。 ぬちぬちといやらしい音を立てる程溢れてきているそれを止めたいのに、その術を水樹は持っていない。 それでも逃げようと腰を捻って抵抗すると、佐藤はそれを容易く固定した。 「なんだ、嫌だ嫌だって…それじゃ誘ってるみたいだぜ水樹」 「ちがっ、やあぁっ!」 奥の深いところを指で穿たれて、ビクンと跳ねる腰も。 トロリと勢いを増した愛液も。 キュウキュウと収縮して刺激を催促する後孔も。 全部全部水樹の意思を裏切っているのに。 ずちゅっと嫌な音を立てて佐藤の指が引き抜かれると、ぽっかりと空いた孔が次を欲してヒクヒク蠢いた。 それを見た佐藤が、高い笑いをこぼす。 「口では嫌がったって、結局欲しいんじゃねぇか!ほんと薄汚ねぇなΩってのは!」 ぎり、と噛んだ唇から血の味が広がった。 頬を伝うのは涙じゃなくて汗だと言い聞かせた。 「そんなに欲しけりゃくれてやるよ…」 くち、と音を立てて充てがわれた熱は、絶望でしかなかった。 やめて、という言葉は音になっていなかった。

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