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第37話
「へ〜…こんな制度あったんだ…」
発情期も終わりに差し掛かり、明日からは登校できそうだなというとき。
水樹は初めて自身の通う学校のホームページにアクセスし、隅から隅までくまなくチェックした。
漸く見つけたのが、『特別奨学生制度』という文字。水無瀬が言っていたトクショーセーとはこのことで間違いなさそうだ。
定期試験の他に、学校が指定した模試等で一定以上の成績を収めることで、学費等々の援助が受けられるらしい。成績によって受けられる援助の大きさが変わってくるため、要問い合わせとなっている。
水無瀬の成績なら相当の援助が出ているんじゃないだろうか。なんせずっと学年トップ、それも過去ほとんどが全教科満点だった気がする。
そりゃあ学校休めないよな。授業中居眠りなんてしたことなさそう。
ポイっとスマホを投げ捨てた水樹はベッドにゴロンと横になった。
奨学金って、経済的に学費が厳しい人がもらうやつだっけ。
裕福な家に育ち、金銭に関しては一切心配したことがない水樹には、奨学金という単語そのものが耳慣れない。
悲しいことに水無瀬のことを何も知らないけれど、もしかして苦労してきているのだろうか。
ふと、水無瀬を初めて見た中学の入学式を思い出す。
今よりも随分幼い容貌で、大きめの制服に身を包んだ水無瀬は、あの頃から際立って美しかった。
そしてその大きめの制服から伸びる痩せた手首。その遠目に見た細い手首が印象的だったのだが、実際に一緒にいるようになる頃には、細身ではあるが痩せているという印象は受けなかったのだ。
「………お腹空いたな」
水樹はベッドから這い降りた。
邪推はやめよう、真実でなかったらあまりに失礼だ。
冷蔵庫の中にある大量の果物ゼリーの中から適当に一つ引っ掴む。特効薬の副作用に苦しむときは、毎回こればかり。龍樹もそれを知っているから、水無瀬に持たせてくれたんだろう。
龍樹の心境を思うと何かがこみ上げてきた。
誤魔化すように、投げ捨てたスマホを拾って、開いたのはメール画面。
『今日も弁当美味かった、ありがとう』
『今日は日直だから部活に遅れる、先にストレッチしててくれ』
『発情期か?大丈夫か?』
『発情期が終わったらまた一緒に昼飯食おうな』
特効薬の副作用は切れた筈なのに、頭痛がした。
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