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第59話

食べて寝て交わってまた寝る。 起きたらそれを繰り返す。 獣同然の1週間を過ごし、漸く発情が落ち着きを取り戻した頃、疲れ切った水無瀬が呟いた。 「水樹、もしかして体力馬鹿?」 αより体力あるΩなんて聞いたことない、とぼやきながら肉うどんをすする姿でさえ、気怠げで妙な色香を持っている。すすっているのはただのうどんなのに。 体力に自信があるのは確かだが、発情期中だから余計だろう。発情期は体力が続く限り意識が途切れるまでセックスしていたいのだから仕方ない。 水樹は毛布にくるまってうとうとしながら、綺麗な形の頭が丼に行ったり来たり揺れる様を見ていた。 叔父と番関係にあったのはほんの一瞬。水樹にとって、発情期を番と過ごすのは、これが初めてのことだった。 身体はこれ以上ないくらい満たされていた。キスも愛撫も精も存分にもらい、食事も最低限ながらに摂り、睡眠も貪った。 だというのに、どこか切ないような物悲しい気持ちになるのは何故だろう。 聞きたいことは山ほどある。 どこまで頼っていいの? 学校休めないって言ってたのに、終業式とホームルームは大丈夫だった? 代わりになるとは言ったけど、所詮代わり。αの龍樹は1週間もバカみたいに発情したりしない。 龍樹じゃない俺のために1週間も割くの、嫌じゃないの? 聞いてもいいのかもしれない。水無瀬は自分から何かを語ることは少ないけど、聞けば答えてくれることが多かった。 『…馬鹿だね、僕らは番だよ?』 あの言葉の裏に、頼っていいんだよという意味があるのなら。 この胸のつかえを取り除くために、聞いてもいいのかもしれない。 ご馳走様、ときちんと手を合わせた水無瀬は自分で器を運んで洗い始めた。 1週間見ていて思ったが、こういうところはすごくきちんとしている。 いただきます。 ご馳走様。 行って来ます。 ただいま。 そういった挨拶は欠かさないし、仮に水樹が眠っていたら起きた時に必ず言う。龍樹の方が余程適当だ。 そういう家庭だったんだろう。 少なくとも放置されて暴力だけ受けて来たわけではないのがよくわかる。 抱えた深い闇を晒してくれたのだから、それなりに突っ込んだ話をしてもいいのかも。 水無瀬に対してはどうにも遠慮をしがちだが、水樹は本来気が強く図太い。 加えて発情期を目一杯番に抱かれて、体は大変軽い。それだけでも随分と水樹の気持ちを後押しした。

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