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第84話

『水樹…っ』 まるで神に愛された天使の如く美しいその顔を欲望と快楽に歪ませたその表情。 水樹は堪らず両手を伸ばして水無瀬の首に回し、真っ赤な唇に噛み付いた。どちらのものとも判別つかない唾液が水樹の頬を伝う。 水無瀬の唇も舌も唾液も、甘くて、ずっとこうしていたくて。 身体の奥の奥まで犯されているのは間違いなく水樹なのに、その美しい聖域を穢す背徳感に溺れるのも水樹の方。 水無瀬との間に隙間があるのが嫌で腰に脚を巻きつけると、より結合が深まって水樹は喘ぎを漏らし、そのままー 「………最低。」 湿った下着と布団。 ついでに言えば身体中を駆け巡るどうしようもない熱。 発情期による夢精という最悪の寝起きを迎えた朝。水樹が17歳の誕生日を迎えた日のことだった。 「とりあえず、学校…あー実力テスト休むのか最悪だな…」 部屋に備え付けの内線専用電話で担任に連絡を入れると、カレンダーを見る。予定より1週間も早い。 更にここ数ヶ月はずっと調子が良くて、最後の発情期はクリスマスの頃、水無瀬と過ごしたあの時だ。これだけ期間が空いていると今回はキツく感じるだろう。 水樹はスマホを手に取り、メール画面を開く。宛先に水無瀬のアドレスを呼び出し、本文を入力しようとして、その指は止まってしまった。 「…実力テストは、休めないよなぁ。」 成績で補助額が左右される特別奨学生である水無瀬が、学校のテストを休めるわけがない。 頼っていいよと言われたけれど、どうしようもないのに連絡するのも気が引ける。心配してくれと言ってるみたいだ。 悶々とするのは水無瀬への気遣いなのかそれとも身体に篭る熱のせいか。水樹は一先ずスマホを置き、汚れた下着を脱ぎ捨てた。 吐いた精の他に、溢れる愛液。常に溢れるそれはシャワーに向かう水樹の素足を伝っていった。 「風呂場で抜いて…特効薬かな…」 特効薬を使うから心配しなくていいよと連絡しておけばいいだろう。 実力テストは明後日から3日間。発情期中はもろに被っている上に、終わる頃にテストが終わる。 「…っ、はぁ…」 したい。 奥まで犯されたい。 突いて擦って中に出して欲しい。 一度思ってしまうと思考が塗りつぶされるのはあっという間。水樹は言うことを聞かない足を叱咤して風呂場に急いだ。 風呂場の鏡に映る自分の顔は、上気して物欲しそうな顔をしている。何が欲しいのかなんて考えるまでもない。 「ん、…なせぇ…っ!」 求めて喘ぐ蕾に触れると、天を仰いだ自身はすぐに爆ぜた。それだけでは到底満足出来ずに、何度も何度も自分で蕾を犯す。 頭の中では、愛しい人を想いながら。

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