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第114話
よく見る光景だ。
ベッドに仰向けになり、蛍光灯の光を浴びてキラキラ光る水無瀬を下から見上げる。
いつもと違うのは、水無瀬の表情だ。
水無瀬は水樹の脚をそっと開かせて、その間に身体を滑り込ませた。触れるだけのキスをして、同時に後ろの蕾に指を忍ばせる。触れた瞬間、くち、と粘り気のある音が無音の部屋に響いた。
細く綺麗な指が一本、侵入してくる。僅かながらの愛液に濡れたそこは、水無瀬の唾液を纏った指を難なくそれを飲み込んだ。
「キツかったら言ってね。」
真面目な顔でそう告げた水無瀬は、中に埋め込んだ指を曲げたり伸ばしたり、出したり入れたり。ゆっくりと水樹の蕾を咲かせ始めた。
それは愛撫ではなく、中を拡げるため。発情期ではない、本来水無瀬を受け入れられる状態ではない水樹にかける負担を減らすための行為だ。
気持ちよくはない。どちらかといえば、正直気持ち悪い。
けれどその丁寧な動きが、嬉しい。
水無瀬は水樹の様子をよくよく伺いながら、指を一本ずつ増やしていく。
2本の指が何度も中を擦り、小さな奥の芽を突いた瞬間、水樹が感じていた不快感は一切消え去った。
「んっ!ぁ…ッ!なに、っ…」
「ここ?ここはやっぱ感じるんだね。」
「やめ、ん、んーっ…やだ、や、いやぁなにこれ…っ」
快感の芽を何度も弄られると、意思とは裏腹に腰が跳ねた。ピチピチと陸に上がった魚のように、それこそ発情期なんじゃないかと思ってしまうほどに。
3本の指が水樹の中に収まる頃にはすっかり中は蕩けて柔らかくなり、水樹もそこでしっかりと快感を拾えるようになっていた。
ぬち、といやらしい音を立てて水無瀬の美しい指が引き抜かれると、蕾はすっかり綻んでキュンと切なく収縮した。
水無瀬が水樹の身体をうつ伏せにしようとして、肩に手をかける。それに気がついた水樹は、そっとその手を剥がして絡めて握った。
「…いい、このまま…」
水無瀬は少し目を見張って、そっと水樹の頭を撫でた。
きっとうつ伏せの方が楽だろう。水無瀬もそう思って、体制を変えようとしたに違いない。
けれど、このまましたかった。
身体の中に大好きな人を受け入れて、大好きな人に抱き締められて、大好きな人をこの目に写しておきたかった。
「痛かったらすぐ言ってね。」
熱くそそり立った欲の鋒が充てがわれ、少しずつ少しずつ胎内に入り込んでくる。
息を詰める水無瀬は、苦しいだろう。こんなにもゆっくりとした挿入は、いわば生殺しに近いのかもしれない。それでも水無瀬はそれをやめなかった。
水樹の呼吸に合わせ、なるべくなるべく痛みも苦痛もないように。
そうして長い時間をかけた挿入を漸く終えて、水無瀬を全て受け入れた水樹の胸を満たしたもの。
それは、紛れもなく幸福だった。
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