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第115話

「…ふ、」 (ああ、これが。) はらり、はらり。 涙が目尻からいくつも溢れ落ちる。泣きたい訳ではないのに、次から次へ溢れる涙。 (これが、セックスなのか。) 胎内に収まった熱が、水樹の熱とゆっくり溶け合って、そう正に一つになるかのような。 困ったような水無瀬に、大丈夫、と微笑んで見せる。痛くない、苦しくない。身体も心も。 「水樹…?」 「大丈夫…続けて。」 少し間を置いて、水無瀬は水樹の目尻に口付けて溢れる涙を救いとった。顔中にキスの雨を降らせて、小さく律動を始める。 「ん、…ん、ふ、ぅん…」 とろとろに解されたそこがむっちりと水無瀬を包み込み、小さな律動の度に中の壁がキュウキュウと歓びを示す。 徐々に徐々に、深く激しく。 ずるりと抜けていく水無瀬を追いかけて捲れる入り口も、突かれて水無瀬を取り込むように締め付ける内壁も、触れ合う肌も繋がれた手も。 全身が、水無瀬を愛しいと叫んでいる。 涙腺が壊れてしまったようだ。身体が揺さぶられる度にはらはらと溢れる透明の雫が枕を濡らして冷たくなっていた。 「あ、っ!ん、んぁっ…あっ!みなせ、みな…んぅ…ん、」 意味を持たない喘ぎを救うように、キス。絡められた舌は、高熱でもあるかのように熱い。 触れる肌は温かく、繋がった場所はどちらの体温なのかもうわからなくなってしまった。 「きもち、い…っ!いい、ん、くぅん…ッ!」 「ん、よかった。」 「く…ぅん、ん…ぁそこ、んーっ!」 快感のツボをグリグリと抉られると、もうどうしようもなくて。 爪痕がつきそうな程水無瀬の手を握りしめて、頭を振って襲い来る快感に耐える。パタパタと髪の毛が枕を打って音を立て、涙がまた溢れ出した。 「はァッ!ん、ん…みなせ、きす、キスして…」 望めばすぐに与えられるキスも、優しく握り返してくれる手も、全てがただただ愛しくて、あまりの幸福に怯えて胸の内が切ない悲鳴を上げた。 初めてのセックスは、誠司と。 9歳の時に、発情期になってフェロモンに当てられたヒート状態の誠司としたあの時のセックスは、確かに快感もあったけれど、それ以上に痛かった。 痛いやめてと叫んでもやめてくれず、いつも優しい誠司の豹変にただただ怯えた。 そのあとは、いつだったか。 ああそうだ、中3の時。知らない同学年の生徒たちに輪姦された。 あの時は発情期じゃなかったけどまぁまぁそれなりに感じて、感じてしまう自分が汚くて吐き気がした。 恋心が芽生えたのはもっと前かもしれないが、あの頃から水無瀬を明確に意識していたと思う。 佐藤に犯されたのは、正直本当に苦痛だった。快楽に逆らえないΩの性が憎くて仕方なかった。 その次は水無瀬と番になったとき。 思い出したくもないくらい苦しかった。 その後何度か発情期を引き起こして、水無瀬とセックスした。愛する番とのセックスはどれもこれも信じられないくらいの快感だった。狂ったように腰を振って求めて、中身の伴わない行為に心は虚しさに襲われた。 それが、今は。

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