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第119話

それから数ヶ月。 発情期を迎えて水無瀬と1週間行為に没頭し、漸く明日には落ち着きそうかという頃になると、発情した水樹に根刮ぎ精を搾り取られた水無瀬の方がぐったりしているのは毎度お馴染みとなっていた。 ベッドに沈む水無瀬にコーヒーを淹れてそっと差し出すと、枕に顔を埋めたままのくぐもった声でありがとう、と力なくお礼を言われた。 カレンダーを見ると、11月が残り少ない。 「…ねぇ、水無瀬って12月何日生まれ?」 のっそりと起き上がった水無瀬はカップを両手で持ってふーふーと息を吹きかけてからコーヒーを一口飲む。それでも熱かったらしく一瞬顔が歪んだ。 「2日。」 「…え?」 「2日。ねぇ、砂糖もう一個入れて。」 「2日!?すぐじゃん!」 誕生日プレゼントにクリスマスのイルミネーションを観に連れて行ってもらった、と話していたから、てっきりクリスマスの前後だと思っていたのに。 どうしよう、プレゼントいつ買いに行こう。明日には発情期が終わりそうだけど、学校もあるし。 ていうか砂糖ちゃんと4つ入れたのにもう一個ってどういうことだ。 「お祝いしてくれるの?」 改めてコーヒーを受け取った水無瀬は砂糖5個の甘さに満足したのか目尻を下げてふわりと微笑んだ。 お祝い。するに決まってる。 プレゼントとケーキを用意して、おめでとうを言って。ケーキはなんとかなるにしても、プレゼントは。 「待って…待ってて、ちゃんと用意するから…」 「何を?」 「何ってプレゼント!ええい、もういいや欲しいものは!?」 本当は自分で水無瀬のために何がいいか考えて探して、としたかったけれど、今からではそれも無理そうだ。いっそ欲しいものを伝えてくれたらネットでもなんでも用意できる。中身がわかっているプレゼントは味気ない気もするけど、外れないからまぁいいだろう。 と、そこまで考えたところで、水無瀬の顔がきょとんとしたまま固まってしまっていることに気付いたのだが。 「え…誕生日プレゼントって、何か物を貰うものなの?」 水樹は思わず頭を抱えた。 そうだった、愛情も金品も下の下の下で育ってきた奴だった。親から貰った誕生日プレゼントも、そのクリスマスのイルミネーション鑑賞会の一回きりなのかもしれない。 ケーキも毎年買ってもらえていたのか謎だ。 「…誕生日は、一般的にプレゼントとケーキが出てくると思うよ。」 「そうなの?僕、その日のうちにおめでとうって言って貰ったら今年はいい誕生日だったなって思ってた。プレゼントとケーキが出てくる誕生日なんて絵本の中だけじゃないんだね。」 「ちゃんと用意するから、待ってて。そうだな、2日は平日だから、その次の日曜にこの部屋で。」 「うん、わかった。」 楽しみだなぁ、と笑う水無瀬は、心から笑っているように見えた。 日曜まで猶予ができた。 プレゼントの目星をつけて、買いに行く日は部活をサボる。ケーキも手作り、は、やめよう。慣れないことはするもんじゃない。 水樹は一人、胸の内で拳を握った。

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