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第120話
「奈美、恋人の誕生日プレゼントって何贈る?」
「いない歴がイコール年齢なんですけど…?」
「すみませんでした。」
「藤田、実紗ちゃんの誕生日プレゼント何贈ってる?」
「ぬいぐるみ!UFOキャッチャーでその場で取ってやるとすげー喜ぶぜ!」
「無理だ。」
「実紗ちゃん、藤田に誕生日プレゼント何贈った?」
「実紗は毎年ケーキ焼いてあげてます!あと、付き合ってからはお揃いの服です!」
「お揃い…?藤田が?あのガチムチが実紗ちゃんとお揃い…?」
誰に聞いてもいい答えなんて返ってこなかった。わざわざ1年の教室まで行って藤田の彼女にまで聞いたというのに、なんてことだ。
UFOキャッチャーの景品なんていくら注ぎ込んでも取れる気がしない。
水無瀬とお揃いの服なんて恥ずかしいを通り越して痛い。
そもそも最初に奈美から答えが返ってこなかった時点で大コケだ。
水樹はネットをなんとなく流し見ながらため息をついた。検索履歴は誕生日プレゼントに因んだワードで埋められている。彼氏だとか恋人だとか打つときに一人で赤面してしまったのは誰にも言えない秘密だ。
「っても、バイトもしてない高校生の出せる額なんて知れてるしな。ネットもあんまり参考にならない…」
水樹の実家は裕福だが、基本的に金銭に関して甘やかされたことはない。
お菓子一個買ってもらうのにスーパーの真ん中でひっくり返って大泣きする水樹と、陳列棚の前でメソメソ泣く龍樹をガツンと叱り飛ばす祖母の懐かしい声が聞こえた気がした。
そんな橘家の金銭教育事情、高校生になって親元を離れた寮生活でも厳しいままである。
ネットによるとプレゼントの定番は、財布や腕時計、バッグらしい。
確かに普段身に付けるものだし、使ってくれたら嬉しいと思う。
けれど正直、普段から使うものだけに好みや使い勝手が難しいのだ。
「水無瀬の好みなんかわかんないしな〜…あいつ使えればなんでもいいだろ、絶対…」
そう思うと去年、流れとはいえマフラーをあげたのは秀逸だったと思う。普段から使うものだし、水無瀬も無くて困っていたし。
と、そこではたと閃いた。
あるじゃないか。
普段から使う、お手頃価格で手に入って水無瀬が喜びそうなもの。
水樹はその日、部活をサボって街へ繰り出し、少ない放課後の時間を目一杯使ってプレゼントを選んだ。
あとは、ケーキはその日の朝にいつものケーキ屋さんに買いに行く。そして昼食に水無瀬の好きなカレーを用意して。
「…あいつ、まさか甘口か?」
特に激辛好きというわけではないが、甘口のカレーはあまり好みではない。前途多難で涙が出そうだった。
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