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第126話

クチュ、と艶めかしい音を立てて離れていった唇は銀の糸を引き、水無瀬の青い瞳に上気した顔の自分が見えた。 優美な微笑みをたたえながら満足そうに水樹の顔を見つめた水無瀬は、目尻に浮かんだ涙をその扇情的な唇で掬い取って額に口付けた。 そして背中にひやりと冷たい手が触れて、ひくんと身体が跳ねる。 水無瀬の手がシャツの中に侵入して素肌に触れていた。 「ん、…なにいきなり…」 「ん?んー、うん。」 「いや、うんじゃなくて、何!」 「うん、とりあえずヤろっか。」 「その顔でヤるとか言わないでよお願いだから!」 「無理かな、僕健全な17歳の男子高校生だもの。」 くつくつと笑いながら背中を撫でる手は徐々に下へ。水樹の体温で温かくなった手がするりと腰を撫でると、じんと甘い痺れに口をつぐむ以外になくなってしまう。 大人しくなった水樹に、良い子、と軽いキスをした水無瀬は、いよいよ本格的に水樹を脱がしにかかる。 「…君には、敵わないなぁ。」 ポツリと呟かれた小さな声。 その言葉の真意を聞きたかったけれど、次の瞬間握られた自身の先端を優しく撫でられて、喘ぎに消えた。 「ふ、…っ!」 繋がった箇所がドクドクと脈打ち、背に重なった水無瀬の胸からもトクトクと脈を感じる。 どちらも常より速く激しく、水無瀬がこの身体に興奮を覚えていることを如実に示していた。 彫刻のような美貌が色と表情を乗せて絵画に昇華する瞬間。そしてその絵画は、愛と欲を持って動き出す。 そのきっかけになれるのが自分だと思うと、水樹はどうしようもない優越感に襲われるのだ。 「…すき…」 溢れた気持ちは確りと水無瀬に届き、水無瀬は耳へのキスで愛を返してくれた。 「僕が佐藤先輩にどれだけ嫉妬したか知ってる?もう本当…気が狂いそうだったよ。」 少しだけ残っていたブラウニーを口に放り込みながらボヤいた水無瀬は腹に火がついたのか冷蔵庫を漁りだした。 水が飲みたくてその背中を追いかけて、そっと抱き着くと、水無瀬がペットボトルを渡してくれる。 「知らないよ。そんなこと言ったら俺なんて龍樹に嫉妬し過ぎて自己嫌悪の塊だったよ。」 「君がさっさと僕に告白してくれてたらあんな暴挙に出なかったのに。」 「うわ、自分の凶行を人のせいにしやがった。」 「だって君のせいでしょ。」 「しかも暴挙あり過ぎてどの暴挙を指してるのかわからん。」 「そんなにあるっけ?」 こんな風に笑い合う時間が訪れるなんて、去年の自分に言っても信じないだろう。 水無瀬の行いは確かに酷かったと思う。けれど水樹がそれを許し、今こうして笑いあっているならそれで良いと思うのだ。

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