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第155話
信じられない。
いくら発情期とはいえ、足を舐められただけで。
その清廉な笑顔を前に、一体自分はどれだけ浅ましい姿を晒しているのかと思うと、罪の意識が一層強くなる。何も悪いことはしていないはずなのに。
それともこの美しい人にこんな浅はかな欲望を満たしてもらおうとすることそのものが罪なのだろうかと、このいやらしい身体が憎らしくて堪らなくなる。
ひいては、いやらしい自分自身が憎らしくなってきて、ポロポロと涙がこぼれていくのだった。
「ああ、泣かないで水樹。」
そう言ってコツンと額を合わせ視線を等しくした水無瀬は、冷たい親指で水樹の頬を伝う雫を拭った。
「もっと意地悪したくなっちゃう。」
滑らかな頬を僅かに紅潮させて、水無瀬はうっとりと呟く。
吐息交じりのその言葉にぞくっと背筋を這ったのは、期待。
水樹は衝動のままに、その肩を押して馬乗りになった。
「ん、…ん…」
赤い唇を貪って、熱い舌を絡め取る。甘くて少し刺激のある、炭酸飲料のようなそれ。
すっかり癖になっている水無瀬の味をもっともっと味わいたくて、息継ぐ間も惜しいくらいにその口内を貪った。
すると下の口も欲しがってきゅっと収縮する。
水樹はその欲求に抗うことなく濡れた下着を脱ぎ捨てて、水無瀬の衣服に手をかけた。
「…あ……」
そして現れた水無瀬の勃ち上がったものを見て、歓喜に震えた。
興奮してくれたのだ。
αの抑制剤でヒート状態にはならない。水樹のフェロモンにも反応しない。
理性を保った状態で、水樹に興奮を覚えてくれたのだ。
嬉しくて愛しくて堪らなくて、目の前に現れたそれにそっとキスすると、優しい手がくしゃりと頭を撫でてくれた。
「やだな、バレちゃった。」
ふふ、と照れ臭そうに笑ったその顔が綺麗で可愛くて格好良くて、胸がきゅうんと切ない悲鳴を上げた。
脳内を埋め尽くす卑猥な単語とは裏腹に、胸の内をを支配したのは初心な恋心。
こういうときめきこそ幸せで大切にしたいのに、次の瞬間にはもう欲しくて欲しくて仕方がなくなっていく。
「…も、お願い水無瀬…!」
頬を滑り落ちたのは、火照った体が流した汗か、それとも水無瀬を求めて泣く心が流した涙か。
「仕方ないなぁ。」
いいよ。
甘美な許可を受けて、水樹は水無瀬の上に跨り、とろとろに解れて太い杭を切望する孔にそっと充てがう。
ほんの少し触れただけで、燃えるように熱い。
中も、もっと熱くして。
「…あ、あ、んあ…あーッ!」
待ち望んだ熱で埋め尽くされた瞬間、びくびくと全身を震わせて、水樹はその勢いのままに達してしまった。
じゅわっと溢れる愛液。
じんと温度を上げる中。
全てが水無瀬を喜んで受け入れて、そして奥へ奥へと誘い込む。
一度達したにも関わらず全く欲は治まらず、水樹はそのまま無我夢中で水無瀬を求めた。
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