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第185話
それはつぷりと何の抵抗もなく入ってくる。何度か行き来するのは、水樹が痛みを訴えないか確かめているのを知っている。
何度も水無瀬と繋がったそこには、痛いどころか物足りないくらいだというのに。
先を促すようにくたりと身体を委ねると、控えめな音を立てて中を探り始める。水樹自身よりも水樹の身体をよく知る指は、時折的確に弱い所に触れながら固く閉ざした蕾を綻ばせていった。
「あッ……ン、んんっ!」
「…それより大事なもの手に入れられたと思うし。」
「なに、ッあ!んんっ…ッふ、はぁ…」
「気持ちいい?」
「っ…ん…」
こくこくと何度も頷くと、水無瀬は満足そうに小さく微笑んでこめかみにキスをした。
いつのまにか後孔は3本も指を飲み込んで、ぐずぐずに蕩けて淫らな音を立てている。水樹は急に恥ずかしくなって、ギュッと目を瞑った。
「…ある意味運命だと思うんだ。」
いつもより低い声は、穏やかで優しい。
まるで独り言のように呟いた水無瀬は、水樹のうなじについた噛み跡をそっと愛でると蕾から指を引き抜き、すっかり弛緩した水樹の身体を抱え直した。
「あ、待っ……あ、あぁッ…!」
水無瀬の言葉の続きをきちんと聞きたい、けれど今続けられたらきっと快感に負けてそれどころではなくなってしまう。
その想いは水無瀬に通じなかったのか、或いは無視されたのか。
とろとろに解された後孔を埋めてくれる熱く滾ったものに、やはり意識を持って行かれてしまった。
「ッ、あ、んんっ!ンっ…!」
ゆっくりと、しかし確実に一番良いところを刺激してくるそれに、恥ずかしい喘ぎを堪えることしかできない。それでも、突かれる度にビクビクと痙攣する身体と強請るように揺らめいてしまう腰が、水樹がどうしようもないほどの快感に襲われていることを示していた。
耳の後ろに感じる水無瀬の息が熱くて、支えてくれる手も繋がった箇所もどこもかしこも熱くて。
「こんなに、僕のことわかってくれようとする人…きっともう出会えない。」
水無瀬の言葉はしっかり耳に届いているのに、その意味を理解できるほど頭は働いていなかった。
過ぎる快感に生理的に涙が溢れる。
快楽に溺れ薔薇色に染まった頬に伝う涙を水無瀬は優しく舐めとると、そのまま水樹を振り向かせて口付けた。
「ンっ…ん、ふ…ッ!んっ!んーッ!」
涙味のキスに酔ったのも束の間。
突然動きを激しくされ、更にはシャツの間から覗く赤く熟れた突起を摘まれて、全身を襲った強い快感に水樹の身体は一気に絶頂を迎えてしまった。
「…あは、後ろでイけたね。」
「んッ…あ、ばか、動くな…も、やだッ…」
「発情期の時あれだけイけるんだから、普段もイけるようになると思ってたんだ。」
「やだやめッ…んあ、あーッ!」
絶頂の余韻に浸る間も与えられず次々に襲いくる快楽に、目の前が明滅する。必死に堪えていた喘ぎももう我慢できず、意味を持たない言葉を溢れさせた。
「愛してるよ水樹。どこにいても、ずっと。」
水無瀬がそう囁いたのは、いつのことだったのか、それとも夢だったのか定かではない。
気がつくと朝を迎えて、水無瀬が入れてくれたおよそ理解出来ないレベルの甘過ぎるコーヒーにげんなりしていた。
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