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第209話
普段人が立ち入らない離れは、少し埃っぽい。いつ誰が買ったのか検討もつかないほど古い本や、祖父の日の目を見なかった作品たち。
古い木造の臭いの中に香る、水無瀬のフェロモンと、少しの汗の匂い。
「ん、…ん、ふ…っ、ん…」
離れに着いて部屋の戸を閉めるなり、どちらからともなく求めあって唇を貪った。
角度を変えながら口内のあらゆる場所を愛撫されて、自然と上がる息を整えるために一瞬離れることさえももどかしい。
柔らかな金髪に手を差し入れて、逃がさないと言わんばかりに水樹からも激しく求めた。
そうしているうちに段々と水無瀬の手は下へ下へと降りていき、背伸びして捲れ上がったTシャツの裾から覗く水樹の腰を撫でている。ムッとする暑さの中、水無瀬の低い体温が心地いい。
水樹の腰を撫でる手が前へと周り、ベルトのバックルを器用に外したとき、水樹がそっと水無瀬の身体を押して漸く二人は離れた。
「冷房…入れよ。熱中症になっちゃう。しばらく使ってないから臭いかもしれないけど…」
水樹はごそごそと記憶を頼りに部屋を漁り、程なくして見つけたリモコンで怪しい音を立てながらも冷房は作動した。独特の臭いが部屋に広がるも、再び水無瀬に触れるとそれも気にならなくなった。
やはりキスだけでやめられるはずがなかった。
発情期でもないのに、水無瀬を求めてやまない。後ろが濡れているんじゃないかと思えるほど、水無瀬が欲しい。
「おいで、水樹。」
古い畳の上に胡座をかいて水樹を手招きする姿は、さながら君主のよう。あまりに自然なその仕草。
水樹は吸い寄せられるようにその上に乗り上げ、再びキスに没頭した。
キスの合間に漏れる控えめな吐息、擦れる布の音、怪しいエアコンの音を聞きながら、水樹にふとある願望が芽生え始めた。
そっと膝で水無瀬の屹立に触れる。
そこは既に硬くなって水無瀬の服を持ち上げていた。
水樹はその膨らみをそっと撫でると、ベルトのバックルに手をかけ前を寛げた。
「水無瀬、あの、俺…俺も、したい。」
真っ赤になりながらそれを告げると、水無瀬は目を丸くした。
その表情にまた羞恥が募る。発情期はともかく、水樹からこう言ったことに積極性を見せたのは初めてのことだった。
「どうしたの?今日はやけに積極的だね。発情期?」
「ち、ちがっ…」
「ふふ、嘘だよ。ありがとう。」
揶揄いを交えながらも、水無瀬の表情は本当に嬉しそうだ。
水無瀬は水樹がやりやすいように端に置いてあった丸椅子に腰掛ける。水樹は素直にその足の間に収まった。
姿を現した水無瀬の男根にそっと手を添える。
ひくりと小さな反応を見せたそれが堪らなく愛しくて、水樹は先端にふわりと口付けてゆっくりとそれを舐め始めた。
「っ…」
「ん、…」
先の方から唾液で濡らしていき、手で舌で丁寧に全体を愛撫していく。
どんどん硬さを増して天を仰ぐそれは素直に水無瀬の快感の度合いを示してくれていた。
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