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第210話

普段は、愛撫もフェラも水無瀬にしてもらうばかりだ。発情期には水樹からすることもあるが、無我夢中でほとんど覚えていない。 意識的に水無瀬を気持ち良くしようというのは初めてのことで、戸惑いも大きい。 少し離れて全体を目に入れると、意外と綺麗な色をしているものの、やはりそれはぬらぬらと光ってグロテスクだし、何より大きい。 こんなものを普段あんな場所に挿れて、快感さえも得ているかと思うと、少し信じられないような気持ちになった。 くしゃりと髪を撫でる感触。 突然のことに驚いて顔を上げると、水無瀬の優しい微笑み。 「水樹って時々処女みたいな反応するよね。」 「んなっ…わ、悪かったね下手くそで!」 「違う違う。いつまでたっても初心で可愛いって言ってるんだよ。」 一人憤慨する水樹を他所にくすくすと笑いをこぼした水無瀬は、さらりと水樹の髪を梳き、触れるか触れないかの微かな口付けを落とした。 「…無理はしなくていいから。」 その言葉に後押しされ、水樹は再び水無瀬の欲を口に含んだ。 歯を立てないように気をつけながらできる限り奥まで咥えると、水無瀬は低く熱い吐息を漏らして天井を仰いだ。 感じてくれているのがわかって嬉しくなり、多少苦しくてももっと奥まで咥え込む。ゆっくりと頭を上下に揺らして屹立を出し入れすると、やがて口の中に男の味が広がり始めた。 漏れ出る先走りを吸い上げながらちらりと水無瀬の顔を見上げると、白い頬は薔薇色に染まり青い瞳は官能に浸っていた。 「んっ…ん、ん…」 美味しいわけないし、むしろ不味い。苦しいし顎は痛いし疲れるし、お世辞にも綺麗なところとは言えないし。 なのに少しも嫌ではないのだから、不思議だ。 時折ちらっと水無瀬の様子を伺うと、目が合ってニコッと微笑まれて、いつもの清廉潔白な微笑みに欲望と快楽が滲み出る男の顔をしているのが堪らない。 口の中でいっぱいになったそれを懸命に頬張りながら、水樹は自身も苦しいほどに勃ち上がっているのを自覚して、もぞもぞと膝を擦り合わせた。 「ん、ぅ…はぁ、んー…」 暫くそうしていると、頭上から聞こえる息遣いがだんだんと荒くなってくる。口の中ではち切れんばかりに成長したそれは脈打ちながらとめどなくとろとろの先走りが溢れ出ていて、限界が近いことを知らせてくれた。 それでもさらさらと髪を撫でてくれる水無瀬の顔を、そっと伺う。 深い快楽に浸りながら、暴力的なまでの欲情を必死に抑えている。 その表情は、天使なんかとは程遠い。誰も知らない、水樹だけが見られる表情だ。 それが、どうしようもなく愛しい。 呆れるほどの独占欲。 「ん、水樹…もう、いいよ。出るから。」 「ん、ふ…んぅ…」 「ちょ、水樹…っ!」 離せという水無瀬を無視して口淫を続け、より激しく吸い上げる。焦ったような声をあげた水無瀬は、くしゃりと水樹の髪を掴んだ。 先走りを大量に漏らす先端に舌を這わせ深くまで咥え込み、じゅっと強く吸い上げる。 と、一層強く脈打って、水無瀬は果てた。 どくどくと溢れてくる青臭い味。 改めて口で受け止めると、ヒート中でなくてもやはり多い。全てを受け止めることは出来ず、口の端から一筋の白い線を垂らして、水樹は漸くそこから顔を上げた。

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