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第211話

「ああ、もう…だからいいって言ったのに…」 呆れたような声を出しながら、水無瀬の表情はどことなく嬉しそうだ。 口の端に垂れた精液を水無瀬に拭ってもらいながら、水樹は口の中に残った精を一気に飲み下した。 「ん…気持ちよかった?」 「え?飲んだ?もー…」 困ったように微笑みながら、水無瀬は期待の眼差しを向ける水樹をそっと抱きしめた。 温かい。 「良かった。ありがと、嬉しい。」 その答えに水樹の心も温かくなり、水樹は緩む表情を水無瀬の肩に押し付けて誤魔化した。 水無瀬の手が水樹のほっそりした背中を撫でて降りて行き、自然な動作でズボンを脱がせていく。 腰を浮かせてそれを助け、下着も脱がせてもらうと、水無瀬の細い指先はとんとんと入り口をノックした。 「んっ…」 「水樹って濡れやすいよね。発情期じゃないのにちょっとだけ濡れるもんね。」 「ばっ…そういうこと言わなくていい!」 「褒めてるんだよ?」 「あぅっ…!ん、ぁ…」 流石にほんの僅かな愛液だけではきつかったのか、水無瀬は自分で唾液を纏わせて再び水樹の秘孔を探った。 するとあっさりと侵入を許すそこは、きゅっと締まって水無瀬の指を歓迎した。 あぐらをかいた水無瀬の長い足の間にすっぽりおさまり、水無瀬の腰に足を絡ませると、妙に心地良い。水樹はくったりと力を抜いて水無瀬の肩に頭を預け、時折いいところを掠める指がもたらす快楽に酔った。 「ふ、…あ、んんッ!ン…」 「水樹、足平気?痛くない?」 「ん、ん…へいき…ッ、あ…」 「このまま上に乗るのが楽?」 「…ッ、ん…」 ブリキのおもちゃのようにコクコクと頷いたけれど、本当はどんな体勢が楽かなんてどうでも良かった。どんな体勢が楽かと水無瀬が気にしてくれたことが嬉しかった。 その気遣いだけで、心がホッと温まり、その安心感は身体に表れ蕾を更に綻ばせた。 柔らかくなった秘孔からぬちっといやらしい音を立てて水無瀬の指が抜けていくと、そこは次を待ち望んで収縮する。 少し腰を浮かせると、ぴたりと熱いものが入り口にあてがわれた。 徐々に徐々に深く奥まで入ってくる。 それは間違いなく異物であるのに、あまりに自然に水樹の中に入り込み、そして馴染んでいく。 「ん、ァ…水無瀬…」 「ん…ね、水樹…名前で呼んでよ。」 「あ、ンッ!んーッ!あ、ゆい、唯ぃ…ッ!」 「うん。」 「だめ、や、すぐイッ…ぁあッ!」 「うん。いいよ。」 水無瀬はまだ少しも動いていない。 水無瀬を受け入れただけで、中が勝手に蠢いて快楽を搾取して、頂点を極めようとしている。 まだ一度も果てていない水樹のそこは解放を求めて蜜を零しながら喘いでいる。 それでも挿れただけで達してしまうのは恥ずかしくて必死に耐えていたのに、水無瀬はその先端にそっと指を這わせた。 「あっ…ふ、…ッ!」 そのほんの少しの刺激だけで声にもならない喘ぎをこぼして、水樹はビクッと全身を跳ね上げてあっという間に白濁を溢れさせた。 「ッ…あ、ひぅ…っ!やぁ、あッ…」 射精の間もビクビクと痙攣する中が水無瀬の雄を勝手に感じ取って何度も何度も極めてしまうと、ただただ意味を持たない言葉を発しながら水無瀬にしがみつくしか出来ない。 耳元に感じる水無瀬の熱い吐息にまた感じて、もうどこもかしこも気持ち良くて。 漸く落ち着いた時には、水樹は早くもぐったりしてしまっていた。 「…大丈夫?」 それを見た水無瀬が苦笑する。 頬と目元を僅かに染めた水無瀬の表情は、幸福だ。 「ッは、ゆい…」 「うん。なあに。」 「唯、好き…」 「うん。僕も。」 どちらからともなく重なった唇。 食むように何度も角度を変えて重ね合わせて、舌を絡ませて吐息を交わした。 「愛してる。」 甘く蕩けるような天使の微笑みが柔らかく告げた愛の告白に、水樹は歓喜の涙を一つ零して頷きと微笑みを返した。

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