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Ⅰ:2
不良に足を突っ込んでいる俺の見た目は、良く言って男前寄り。そのまま言えば金髪のヤンキーだ。そんな俺に抱かれたいと、金を持ってやって来る奴らは基本可愛らしい系か、地味で大人しい系統が多い。
悪そうな男に惹かれる、そんな年頃ってやつなんだろうか?極希にガチムチが居ないでもないが、それは本当に極々僅かな話だ。
入ってきた男は、遠目から見ても長身だった。くせっ毛なのか、緩いウェーブがかかった黒髪は顔の目もとすべてを隠しており、顔があまり良く見えない。だが、辛うじて見える鼻筋は通っているし、薄めの唇も形が良い。その立ち姿も、俺から言わせればまるでモデルだ。
腰の位置も高く、細身だが細すぎず。多分、薄くもしっかりとした筋肉が付いているに違いない事が、カーディガンを羽織った上からでも分かった。
「何だお前…」
こいつ、喧嘩でも売りに来たか? そう思って喧嘩腰に声をかければ、そいつは後ろ手に鍵をかけた。
「テメェ、俺になんの」
「予約」
「あ!?」
「予約した、秋月神奈」
「………は?」
アキヅキカンナ
アキヅキカンナ
アキヅキ……カンナ? え、……予約?
「え、」
「アンタ、金払えばヤらせてくれんでしょ」
「え、おまっ」
戸惑う俺を無視して、男、秋月は上に羽織っていたベージュのカーディガンを脱ぎ捨てる。
「や、待てよ。おまっえ!? うぶっ!!」
スタスタと長い脚で近寄ってきたかと思うと、秋月は俺の二の腕をガッチリと掴み、そのまま遠心力に任せてベッドへと放り投げる。
「うわっ!? ちょっ、は!?」
起き上がる暇も与えられぬまま、うつ伏せの俺に伸し掛ってきたかと思うと奴は俺の腕を縛り上げた。
「痛ってー! おい!! ふざけんじゃねぇよ!! 何のつもりだよテメェコラァ!!」
ジタバタと暴れる俺に、秋月が舌を打つ。
「他の奴にはヤらせて、俺はダメってこと?」
「へ!?」
「これだけ払えば、文句無いでしょ?」
そう言って目の前に放り投げられたのが、例の枕元にあった封筒だ。落ちた衝撃で中から無造作に札が顔を出した。
「何だよ、これ…」
「十万入ってる。だからヤらせて」
「待てっ! お前何か勘違ッひゃぁあ!?」
「酷くされたくなかったら、大人しくしてて」
そうして俺から自由を奪った秋月は、まんまと俺のバックバージンを奪い、そして俺が気を失っている間に姿を晦ました。
ふざっけんじゃねぇえええよぉお!?
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